このユニットの結論
本番稼働の判断(Go / No-Go)は、判断する人・判断の材料・判断の基準・判断の時点を、事前に決めておくものです。
判断の材料は各担当がそろえますが、「稼働してよい」と決めて責任を持つのは、決められた人間です。AIは材料の整理を手伝えても、判断はしません。
1. 何の話か
このユニットは、本番稼働の判断の話です。
本番稼働とは、新しいシステムを実際の業務で使い始めることです。いったん稼働すると、新システムで業務のデータが作られ始め、簡単には元に戻れなくなります(12-03 失敗したら元に戻せるか)。
2. なぜ必要か
判断の仕組みが決まっていないと、
- 当日になって、誰が決めるのかで迷う
- 担当ごとに「自分の範囲は大丈夫」と言うが、全体として大丈夫かを誰も判断しない
- 問題を抱えたまま、予定の日だから稼働する
ということが起きます。
3. このユニットで分かること
- Go / No-Go の判断で決めておくこと
- 判断の材料の集め方
- 判断で、AIに任せてはいけないこと
4. 判断で決めておくこと
| 決めること | 内容(一般的な説明) |
|---|---|
| 判断する人 | 最終的に「稼働する/しない」を決める人 |
| 材料を出す人 | テスト・データ移行・切替・運用・業務などの各担当 |
| 判断の基準 | 何がそろえば稼働してよいか。何が残っていれば止めるか |
| 判断の時点 | いつ判断するか(切替の前、戻せなくなる地点の手前など) |
| 条件付きの扱い | 問題が残る場合、条件を付けて進めるか、誰が認めるか |
| 記録 | 判断の内容・理由・判断した人を残す |
5. 判断の材料(一般的な例)
- テストの終了判断の結果(10-06 テストをいつ終了してよいのか)
- データ移行の照合の結果(11-06 移行後に本当に合っているか確認する)
- 切替と切り戻しのリハーサルの結果
- 稼働後の運用・問い合わせ・障害対応の体制
- 業務部門の準備(利用者への説明、手順書)
- 残っている問題と、その回避策
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- M18 本番稼働
- AIへ最終委任しないこと:本番移行承認、Go / No-Go、重大障害判断 など
- P-001 佐伯 隆志 — CFO/プロジェクトスポンサー
- P-002 高瀬 真理 — CIO/IT統括責任者
- P-003 西村 俊介 — プログラムマネージャー
- P-011 山下 恵 — 本番移行・運用リーダー
- Unit 12-05 のタイトルは「誰が本番稼働を決めるのか」
アステリア案件で、誰が Go / No-Go を判断するか、どの基準で判断したかは、正本に記載がありません。未確定 役職名から判断者を推測しません。
6. THINK — 全員が「自分の範囲は大丈夫」
判断の会議で、テスト・移行・切替・運用の各担当が、それぞれ「自分の範囲は大丈夫」と報告しました。
問題
これで稼働してよいと判断できるでしょうか。
判断例を開く
判断
それだけでは判断できません。
確認すること:
- 各担当の「大丈夫」は、事前に決めた基準に照らした結果か
- 担当と担当の間(つなぎ目)の確認は、誰が行ったか
- 残っている問題を、全体として受け入れられるか
- 判断する人が、材料を見て決めたことを記録したか
部分ごとの「大丈夫」を足しても、全体の判断にはなりません。
7. よくある失敗
- 判断する人を、当日まで決めていない
- 判断の基準がなく、報告の雰囲気で決める
- 条件付きで進めたが、条件を誰がいつ確かめるか決めていない
- 判断の記録が残っていない
8. 成果物との接続
- CUT-005 本番稼働判定資料:判断の材料と基準をまとめる
- TST-006 利用者受入テスト・終了判定報告書:テストの終了判断の結果
- DAT-007 データ照合報告書:データ移行の照合の結果
- PRG-007 意思決定記録:判断の内容と理由を残す
危機演習 CR09 本番移行が計画時間を超過、CR10 重大な脆弱性が発見される では、稼働の前後で難しい判断を迫られる場面を体験します(学習上の接続です。正式な対応関係ではありません)。
9. AI WORKFLOW — 判断の材料をそろえる手伝い
指示例:
「次の各担当の報告を、判断の基準の項目ごとに整理し、①基準を満たしている根拠が示されている項目、②根拠が示されていない項目、③担当と担当の間で確認が抜けている可能性がある項目、を挙げてください。稼働してよいかは判断しないでください。」
10. REVIEW — AIの整理を確認する
- 報告の原本と、AIの整理が食い違っていないか
- 「根拠が示されている」とされた項目の根拠を、人が確かめたか
- AIが「稼働可能」と結論づけていないか
11. 人間が判断すること
- 本番稼働する/しない(Go / No-Go)
- 残っている問題を受け入れるか
- 条件付きで進める場合の条件と、その確認方法
本番移行承認と Go / No-Go は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。
12. 判断演習
あなたは、Go / No-Go の判断の会議を準備する担当です。
会議の前に決めておくべきことを、上の表に沿って書き出してください。アステリア案件で正本に記載がない項目(判断する人など)は、「未確定:誰が決めるか」と書いてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
本番稼働の判断は、判断する人・材料・基準・時点を事前に決めて行います。
材料はAIと各担当がそろえても、決めるのは人間です。