このユニットの結論
本番移行のリハーサル(事前練習)は、「手順どおりに動くか」を確かめるだけのものではありません。
本番と同じ条件・同じ人・同じ順番で通して行い、手順書のあいまいさ、予定と実際の差、戻す手順が本当に使えるかを見つけて、本番の前に直すためのものです。
1. 何の話か
このユニットは、本番移行(本番切替)のリハーサルの話です。
本番切替は、多くの場合、業務を止められる限られた時間の中で、1回で成功させる必要があります。そのため、本番の前に、同じ作業を練習しておきます。切替の計画の全体は 12-01 本番切替計画とは何か、戻す手順は 12-03 失敗したら元に戻せるか で学びました。このユニットでは、その計画と手順を練習で確かめることを考えます。
2. なぜ必要か
リハーサルをしない、または形だけで済ませると、
- 手順書に書かれていない作業や、書き方があいまいな手順に、本番で初めて気づく
- 予定していた時間に収まるかが、本番まで分からない
- 戻す手順を一度も試さないまま、本番で「戻す」判断を迫られる
- 担当どうしの引き継ぎや連絡が、本番でうまくつながらない
ということが起きます。
3. このユニットで分かること
- リハーサルの種類と、それぞれで確かめること
- リハーサルで本番に近づける条件
- リハーサルで記録すること
- リハーサルで、AIに任せてよいことと人間が決めること
4. リハーサルの種類
一般的には、次のように段階を追って行います。
| 種類 | 確かめること |
|---|---|
| 部分の練習 | データ移行、システムの切替など、一部の作業の手順と時間 |
| 通しの練習 | 最初から最後まで、手順書の順番どおりに通したときの流れと時間 |
| 本番と同じ条件の練習 | 本番と同じ量のデータ、同じ時間帯、同じ人で、本番と同じように行う |
| 戻す練習 | 途中で失敗した想定で、戻す手順を実際に行う |
何回行うか、どの種類をどこまで行うかは、プロジェクトで決めます。練習の結果で手順を直したら、直した手順でもう一度確かめます。
5. 本番に近づける条件
リハーサルの結果が本番の見込みとして使えるかどうかは、どれだけ本番に近い条件で行ったかで決まります。
- データ:本番と同じくらいの量・種類のデータか
- 環境:本番と同じ構成の環境か。違う点は何か
- 人:本番で作業する人が、本番と同じ役割で参加しているか
- 順番と引き継ぎ:手順書の順番どおりか。担当から担当への引き継ぎも、本番と同じ流れで行ったか
- 時間帯:本番と同じ時間帯(夜間・休日など)に行ったか
本番と違う条件で行った場合は、その違いと、結果にどう影響しうるかを記録します。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- M18 本番稼働
- 10年分のデータ移行
- P-011 山下 恵 — 本番移行・運用リーダー
- P-009 橋本 奈緒 — データ移行リーダー
- 成果物に CUT-004 本番切替リハーサル結果、DAT-006 データ移行リハーサル結果がある
- 本番移行承認は、AIへ最終委任しない事項の1つ
アステリア案件で、リハーサルを何回、いつ、どの条件で行ったか、その結果はどうだったかは、正本に記載がありません。未確定
6. リハーサルで記録すること
- 手順ごとの、予定の時間と実際の時間
- 手順書どおりに進まなかった箇所と、その理由
- 手順書に書かれていなかった作業
- 担当の引き継ぎでつまずいた箇所
- 戻す手順を試した結果
- 直すことにした点と、その担当・期限
記録は、手順書(CUT-002)と計画(CUT-001)の見直しに使います。「うまくいった」という感想だけでは、次に生かせません。
7. THINK — リハーサルは予定より早く終わった
本番と同じ量のデータを使った通しのリハーサルが、予定より早く終わりました。ただし、今回は手順に詳しい開発の担当者が作業し、本番で作業する運用の担当者は見学でした。
問題
このリハーサルの結果をもとに、「本番も予定の時間で終わる」と判断してよいでしょうか。
判断例を開く
判断
そのままでは判断できません。
確認すること:
- 本番で作業する人が、手順書だけを見て同じように進められるか
- 詳しい担当者が、手順書に書かれていない判断や作業をしていなかったか
- 担当の交代や引き継ぎがある場合、その流れも練習したか
- 戻す手順を、本番の担当者で試したか
本番と違う条件で行ったリハーサルの結果は、その違いを踏まえて読みます。必要なら、本番の担当者でもう一度行います。
8. よくある失敗
- 手順に詳しい人だけでリハーサルを行い、本番の担当者が手順を知らない
- 少ないデータで行った時間を、本番の見込みとして使う
- 戻す手順を練習しない
- リハーサルで見つかった問題を記録せず、手順書を直さない
- 手順書を直したあと、もう一度確かめないまま本番を迎える
9. 成果物との接続
- CUT-004 本番切替リハーサル結果:リハーサルの条件・結果・直す点を残す
- CUT-002 本番切替詳細手順書:リハーサルの結果で直す手順書
- CUT-001 本番切替計画書:リハーサルの計画と、その結果で見直す全体の計画
- CUT-003 切り戻し計画書:戻す練習で確かめる計画
- DAT-006 データ移行リハーサル結果:データ移行の練習の結果
データ移行の練習は 11-05 何度も移行リハーサルをする理由 で学びます。危機演習 CR09 本番移行が計画時間を超過 では、切替の当日の場面を体験します(学習上の接続です。正式な対応関係ではありません)。
10. AI WORKFLOW — リハーサルの記録を整理させる
AIは、リハーサルの記録を手順書と照らし合わせる下書きに役立ちます。
指示例:
「次のリハーサルの記録と手順書を比べ、①予定と実際の時間の差が大きい手順、②手順書にない作業が行われた箇所、③手順書どおりに進まなかった箇所、を表にしてください。本番に進んでよいかは判断しないでください。」
11. REVIEW — AIの整理を確認する
- 表の時間が、元の記録と合っているか
- 記録に残っていない出来事(口頭で伝えられたつまずきなど)が、抜けていないか
- AIが「問題なし」「本番に進める」と結論づけていないか
12. 人間が判断すること
- リハーサルを何回、どの条件で行うか
- リハーサルの結果を、本番の見込みとして使ってよいか
- 見つかった問題を直したと判断してよいか。もう一度リハーサルを行うか
本番移行承認と Go / No-Go は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。
13. 判断演習
あなたは、本番切替のリハーサルを計画する担当です。
リハーサルを「本番に近い」と言えるようにするために、条件として必ずそろえることを3つ挙げてください。そろえられない条件があるときに、何を記録するかも書いてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
リハーサルは、本番と同じ条件・同じ人・同じ順番で行い、手順のあいまいさと予定と実際の差を見つけるためのものです。
見つけたことは手順書と計画に反映し、直した手順でもう一度確かめます。