これは何か
意思決定記録は、プロジェクトの中で行われた重要な判断について、何を決めたか・誰が決めたか・どの案を比べたか・なぜその案を選んだかを残す成果物です。
会議の議事録とは違い、判断ごとに1件ずつ記録します。議事録は「会議で何が話されたか」、意思決定記録は「何が決まったか、なぜか」を残します。
なぜ作るか
- 同じ議論を何度も繰り返さないようにする
- あとから入った人や、別のチームの人が、決まったことと理由を知れるようにする
- 前提が変わったとき、どの判断を見直せばよいかが分かる
- 決めた人と決めた理由が残り、「誰が決めたのか分からない」状態を防ぐ
誰が使うか・いつ作るか
- 書く人:判断の場を運営する人(PMO など)、判断を上げた担当
- 確かめる人:判断した人
- 使う人:プロジェクトの全員。特に、その判断の影響を受けるチーム
- 一般的には、判断が行われたときに、その場かすぐ後に書きます。あとからまとめて書くと、比べた案や理由が抜けます
- アステリア案件の判断の記録は、正本に記載がありません。未確定
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
判断に関係する記載
- 約120人規模のプロジェクト、マルチベンダー
- P-001 佐伯 隆志 — CFO/プロジェクトスポンサー
- P-003 西村 俊介 — プログラムマネージャー
- P-004 田辺 彩 — PMOリーダー
- AIは意思決定責任者ではない。投資承認・要件確定・設計承認・セキュリティ例外承認・本番移行承認・Go / No-Go・重大障害判断は、AIへ最終委任しない
アステリア案件で、どの判断を誰が行うか、記録の様式、記録を管理する人は、正本に記載がありません。未確定 上の人物の役割から、判断する人を推測しません。
主な項目
一般的には、1件の判断について次を書きます。
- 記録番号と件名
- 決めること:何を決める必要があったか
- 背景:なぜ判断が必要になったか
- 比べた案:選ばなかった案も含めて書く
- 決めたこと:選んだ案
- 理由:その案を選んだ理由と、受け入れた弱み
- 決めた人と日付
- 影響:影響を受けるチーム・成果物
- 見直しの条件:どうなったら判断を見直すか
設計の判断については、同じ考え方の ARC-006 設計判断記録 があります。
教材用サンプル成果物の読み方を学ぶための例
教材用サンプル — 判断の1件
この成果物は学習用サンプルです。FROZEN正本に記載されたCASE FACTと、成果物の読み方を学ぶための教材用サンプル値を区別して表示しています。
次の表は、意思決定記録の書き方を学ぶための例です。内容はすべて教材上の架空の例で、アステリア案件で行われた判断ではありません。
| 項目 | 記入の例(教材上の例) |
|---|---|
| 記録番号・件名 | DEC-EX-01 利用者向けの操作説明会の開き方 |
| 決めること | 説明会を、部署ごとに開くか、全社で一斉に開くか |
| 背景 | 稼働の前に、全利用者が操作を知る必要がある |
| 比べた案 | A:部署ごと(回数は多いが、業務に合わせた説明ができる)/B:全社一斉(1回で済むが、質問に答えきれない) |
| 決めたこと | A:部署ごとに開く |
| 理由 | 業務ごとに使う画面が違うため。回数が増える負担は受け入れる |
| 決めた人・日付 | 決めた立場の人の名前と日付を記入 |
| 影響 | 教育の担当の計画、各部署の日程 |
| 見直しの条件 | 説明会の準備が期日に間に合わない場合 |
読み方
- 「比べた案」に、選ばなかった案が書かれているか
- 「理由」に、受け入れた弱みまで書かれているか
- 決めた人が、その判断をしてよい立場の人か
- 影響を受けるチームに、判断が伝わっているか
- 見直しの条件が書かれているか
書き方
- 判断が必要になったら、記録番号を取り、「決めること」を1文で書く
- 判断の前に、比べる案と、それぞれの長所・短所を書く
- 判断の場で、決めたことと理由を書く
- 決めた人に内容を確かめてもらい、日付を入れる
- 影響を受けるチームに知らせる
- 前提が変わったら、見直しの記録を追加する(元の記録は消さない)
何を書いてはいけないか
- 選んだ案だけで、比べた案がない記録
- 「全員で合意」のような、決めた人の分からない記録
- 前の判断を消して上書きすること(見直したら、新しい記録を足す)
どこを見るか
- 決めることが1文で書かれているか
- 比べた案と理由
- 決めた人と日付
- 影響と、知らせた先
- 見直しの条件と、見直しの記録
赤信号
- 決めた人の欄が空欄
- 理由が「総合的に判断」だけ
- 同じ件名の判断が何度も記録され、どれが今有効か分からない
- 判断の記録が、会議の議事録の中に埋もれている
よくある失敗
- 議事録を残せば十分と考え、判断ごとの記録を作らない
- 「決まったこと」だけを書き、なぜそう決めたかを書かない
- 判断を見直したときに、古い記録を消してしまう
関係するUnit・成果物・危機演習
- Unit:03-03 誰が決め、誰が実行するのか、03-01 誰が最終責任を持つのか、05-05 設計判断をなぜ記録するのか、00-04 120人はどうやって仕事をするのか
- 成果物:ARC-006 設計判断記録、PRG-004 役割・責任分担表、PRG-006 課題・リスク管理表、REQ-006 要件確定記録
- 危機演習:この成果物を直接の題材にする危機演習はありません
AI WORKFLOW
AIは、会議のメモから判断の記録の下書きを作るのに役立ちます。
「次の会議のメモから、決まったことを1件ずつ取り出し、①決めること、②比べた案、③決めたこと、④理由、⑤決めた人、の欄に分けてください。メモに書かれていない欄は空欄にし、推測で埋めないでください。」
REVIEW
- 下書きの内容が、元のメモと合っているか
- AIが、比べた案や理由を補って書いていないか
- 決めた人の欄を、本人に確かめたか
人間が判断すること
- 何を決めるか。どの案を選ぶか
- 判断を見直すか
- どの判断を記録に残すか
AIは、判断の材料の整理と記録の下書きを手伝います。判断そのものは人が行います(正本の方針)。
いつ使うか
この教材では STAGE 03|120人をどう動かすのか の文脈で扱います。 アステリア案件での正式な作成・使用時期(月)は正本に記載がないため、未確定としています。
最後の問い
半年後にこの記録を読んだ人は、「何を、誰が、どの案の中から、なぜ選んだのか」を説明できますか?