このユニットの結論
本番切替の当日は、業務を止めてから、新しいシステムで業務を再開するまでの、一続きの流れです。
業務の締め、旧システムの停止、最後のデータの取り出し、移行、確かめ、稼働の判断、業務の再開を、関わる人全員が同じ流れとして理解し、状況を共有しながら進めます。そして、この流れは当日ではなく、業務の側の準備から始まります。
1. 何の話か
このユニットは、本番切替の当日の流れの話です。
切替の全体と順番の大切さは 12-01 本番切替計画とは何か で学びました。ここでは、業務を止めてから再開するまでを段階ごとにたどります。
たとえるなら、お店の改装です。閉店し、古い棚を片づけ、新しい棚に商品を並べ、点検し、開けてよいかを決めてから、お客さんを迎えます。
2. なぜ必要か
当日の流れを全員が理解していないと、
- 業務部門が、止めるべき時点を知らずに旧システムへの入力を続ける
- 担当が自分の段階だけを見て、流れ全体での位置が分からない
- 「今どこまで進んでいるか」を、人によって違って理解する
ということが起きます。
3. このユニットで分かること
- 業務を止めてから再開するまでの段階
- 関わる人と連絡の体制
- 当日の状況の共有のしかた
- 業務の側で前もって準備すること
4. 停止から稼働までの段階(一般的な例)
| 段階 | 何をするか | 主に関わる人 | 終わったと言える状態 |
|---|---|---|---|
| 業務の締め | 旧システムへの入力を止め、締めの処理を終える | 業務部門 | 締めの完了が伝えられた |
| 旧システムの停止 | 利用者が使えないようにし、更新を止める | 運用・基盤 | 更新が止まったことを確かめた |
| 最後のデータの取り出し | 移行の元になるデータを取り出す | データ移行 | 取り出したデータの件数などの記録がある |
| 移行 | 新しいシステムへデータを入れる。つながる他のシステムも切り替える | データ移行・連携の担当 | 処理が終わり、エラーの記録を確かめた |
| 確かめ | データが合っているか、画面と連携が動くか | データ移行・業務・運用 | 移行したデータの確かめ(11-06)と動作の確認の結果がある |
| 稼働の判断 | 新しいシステムで業務を始めてよいかを決める | 決められた判断者 | 判断とその理由の記録がある |
| 業務の再開 | 利用者に開放し、業務を始める | 業務部門・運用 | 最初の業務が動いたことを確かめた |
途中には、「このまま進むか、元に戻すか」を決める地点があります。戻し方は 12-03 失敗したら元に戻せるか、稼働の判断は 12-05 誰が本番稼働を決めるのか で学びます。
5. 関わる人と連絡の体制
一般的には、次の役を決めておきます。
- 全体を見る役:流れ全体の状態を把握する
- 各段階の担当:自分の作業を行い、終わったら全体を見る役に伝える
- 業務部門の窓口:締め・再開を業務の側で進め、利用者へ伝える
- つながる他のシステムの窓口:相手の側の切替を確かめる
- 判断者:進むか戻すか、稼働してよいかを決める
あわせて、連絡の経路と、問題が起きたときの知らせ先を決めます。
6. 状況を共有する
当日は、「今どの段階か」「終わった段階」「進めている段階」「起きている問題」を、時刻と状態で書き、決まった場所で共有します。
個別に聞いて回らなくても、全員が同じ状況を見られるようにします。当日、全体がどれくらいの時間で終わるかの見通しは、リハーサルで確かめます(12-04 本番移行を事前練習する)。
7. 業務の側の準備
- 利用者への告知:いつから使えなくなるか、再開をどう知らせるか
- 入力の締め:どの時点までに、何を入力し終えるか
- 止まっている間の業務:その間に起きた取引をどう記録し、再開後にどう入れるか
- 再開後の最初の確認:誰が、どの業務で、動いたことを確かめるか
- 問い合わせの窓口:再開後の問い合わせを受ける体制(14-01 稼働直後の集中対応期間)
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- M18 本番稼働、M21 初期安定化完了
- 10年分のデータ移行
- 約36本のシステム連携
- P-011 山下 恵 — 本番移行・運用リーダー
- P-009 橋本 奈緒 — データ移行リーダー
- AIへ最終委任しないことに「本番移行承認」「Go / No-Go」がある
アステリア案件の切替の日時、段階ごとの手順と担当、連絡の体制、判断者、業務部門の準備の内容は、正本に記載がありません。未確定
8. THINK — 前日の「締めを遅らせてほしい」
切替の前日の夕方、営業の担当から連絡がありました。
「明日の朝までに入力したい契約が何件かあります。旧システムの入力の締めを、少し遅らせてもらえませんか。」
問題
連絡を受けた担当者が、その場で認めてよいでしょうか。
判断例を開く
判断
その場で個人の判断で認めるべきではありません。
確認すること:
- 締めを変えることを、誰が決めるか(事前に決めた判断者と手順があるか)
- 締めを動かすと、最後のデータの取り出しの前提が変わる。取り出しと移行の担当に確実に伝わるか
- 締めのあとに入力されたデータが、移行されずに残る危険はないか
- 代わりの方法はないか(止まっている間の手順で記録し、再開後に入力する など)
- 変えるなら、業務部門の全体に知らせ、記録したか
変えるなら、決められた人が、影響を確かめて決めます。
9. よくある失敗
- 業務部門への告知が遅く、締めのあとも入力が続く
- 状況を共有する場所がなく、問い合わせが特定の担当に集中する
- つながる他のシステムの相手に、切替の予定が伝わっていない
- 稼働直後の支援につながっていない
10. 成果物との接続
- CUT-001 本番切替計画書:段階の流れ、担当、判断の地点
- CUT-002 本番切替詳細手順書:段階ごとの作業の手順と、うまくいかないときの行き先
- DAT-007 データ照合報告書:移行したデータが合っているかの確かめの結果
- CUT-005 本番稼働判定資料:稼働の判断の材料と基準
- OPS-009 稼働直後支援・運用引継ぎ計画:業務を再開したあとの支援の体制と、通常の運用への引継ぎ
11. AI WORKFLOW — 業務部門へのお知らせを下書きさせる
指示例:
「次の本番切替計画書から、業務部門に伝えるべき事項(入力の締め、止まっている間の業務、再開の知らせ方、問い合わせ先)を抜き出し、お知らせの下書きを作ってください。日時・連絡先など計画書にない値は空欄のままにしてください。」
12. REVIEW — AIの下書きを確認する
- 計画書と食い違っていないか
- 空欄にすべき日時や連絡先を、AIが埋めていないか
- お知らせを送るかどうかを、人が決めたか
13. 人間が判断すること
- 業務の締めと、旧システムの停止を始めること
- 締めなど、決めた段取りの変更を認めるか
- 途中で、進むか元に戻すか
- 稼働してよいか(Go / No-Go)、業務の再開を利用者に知らせるか
本番移行承認と Go / No-Go は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。
14. 判断演習
あなたは、切替の当日に全体の状況を関係者へ共有する報告の形を決める担当です。
業務部門の窓口と、判断者とでは、同じ当日の状況でも必要な情報が違います。上の「状況を共有する」で挙げた項目をもとに、それぞれに届ける報告で何を加え、何を省くかを書いてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
本番切替の当日は、業務を止めてから再開するまでの一続きの流れです。
段階と担当と連絡の経路を決め、状況を時刻と状態で共有し、業務の側の準備から始めます。