このユニットの結論
データ移行は、古いシステムのデータを新しいシステムへ「そのまま写す」作業ではありません。
新しいシステムで業務を続けられるように、どのデータを移すかを選び、新しい形に合わせて変換し、誤りを直し、正しく移ったことを確かめるという、業務の判断を多く含む仕事です。
1. 何の話か
このユニットは、データ移行の全体像の話です。STAGE 11 の入口にあたります。
新しいシステムを動かし始める日には、それまで古いシステムで使っていた顧客・社員・案件などのデータが、新しいシステムに入っていなければ、業務を続けられません。このデータを移す仕事が、データ移行です。
2. なぜ必要か
データ移行を「コピー作業」と考えると、
- 新しいシステムの項目の形に合わず、データが入らない、または意味が変わって入る
- 古いシステムにたまった誤り・重複・使われていないデータを、そのまま新しいシステムに持ち込む
- 業務の担当が関わらないまま進み、稼働してから「このデータがない」「数が合わない」と分かる
- 本番の切替の日に、移行が時間内に終わるかが分からない
ということが起きます。
3. このユニットで分かること
- データ移行に含まれる仕事の全体
- 移行が業務の判断を多く含む理由
- STAGE 11 の各ユニットのつながり
- データ移行で、AIに任せてよいことと人間が決めること
4. データ移行に含まれる仕事
一般的には、次の仕事を順に、何度か繰り返しながら進めます。
| 仕事 | 内容 | 詳しく学ぶユニット |
|---|---|---|
| 方針を決める | 何を、どこまで、どの方法で移すか | 11-02 |
| 項目を対応させる | 古い項目が、新しいどの項目になるか | 11-03 |
| 誤りを直す | 誤り・重複・欠けを見つけ、どう直すかを決める | 11-04 |
| 練習する | 本番と同じように移してみて、問題を見つける | 11-05 |
| 確かめる | 移したデータが正しいかを、根拠をもって確かめる | 11-06 |
このうち、プログラムを作って実行する部分は、全体の一部にすぎません。何を移すか、項目の意味は合っているか、誤りをどう直すか、正しく移ったと言えるかは、そのデータを業務で使う人でなければ判断できません。
5. 業務の担当が関わる理由
データの意味を知っているのは、そのデータを毎日使っている業務の担当です。
- 「この項目には、本来の意味とは違う使い方をしてきた」
- 「この区分のデータは、もう何年も使っていない」
- 「このデータは、年に一度の処理でしか使わないが、なくなると困る」
こうしたことは、システムの設計書には書かれていないことが多く、業務の担当に聞かなければ分かりません。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- 10年分のデータ移行
- P-009 橋本 奈緒 — データ移行リーダー
- M18 本番稼働
- 成果物に DAT-003 データ移行方針書、DAT-004 データ移行対応表、DAT-005 データ品質・クレンジング一覧、DAT-006 データ移行リハーサル結果、DAT-007 データ照合報告書がある
アステリア案件の移行元のシステム、移すデータの種類と量、移行の進め方と時期は、正本に記載がありません。未確定 どのデータをどのシステムで正式なものとするか(データの正本)は、システム・連携 で確認してください。
6. THINK — 「丸ごとコピーすれば1日で終わる」
移行の計画を立てる会議で、技術の担当者が次のように提案しました。
「古いシステムのデータベースを丸ごと新しいシステムにコピーすれば、1日で終わります。細かい確認は、稼働してから問題が出たら直せばよいと思います。」
問題
この進め方でよいでしょうか。
判断例を開く
判断
この進め方では進められません。
確認すること:
- 新しいシステムの項目の形・意味は、古いシステムと同じか
- 古いシステムのデータに、誤り・重複・使われていないデータはないか
- 移したあと、正しく移ったことを誰がどう確かめるか
- 稼働してから問題が出たとき、業務はどうなるか。直すのにどれだけかかるか
稼働してから直すデータの誤りは、その間に行われた業務の処理にも影響します。移行の前に見つけて直す方が、ずっと小さな手間で済みます。
7. よくある失敗
- 移行を技術の担当だけの仕事にし、業務の担当が関わらない
- 移行の計画を、開発の終わりごろまで後回しにする
- 古いデータの誤りに、移行の直前に初めて気づく
- 練習をせずに、本番の切替の日に初めて全部のデータを移す
- 「エラーが出なかった」ことを、正しく移ったことの証拠にする
8. 成果物との接続
- DAT-003 データ移行方針書:何を、どこまで、どの方法で移すか
- DAT-004 データ移行対応表:古い項目と新しい項目の対応
- DAT-005 データ品質・クレンジング一覧:見つかった誤りと、その直し方
- DAT-006 データ移行リハーサル結果:練習の結果
- DAT-007 データ照合報告書:正しく移ったことを確かめた結果
9. AI WORKFLOW — 移行の仕事の洗い出しを手伝わせる
AIは、移行の計画の抜けを探す下書きに役立ちます。
指示例:
「次のデータ移行の計画について、①方針、②項目の対応、③誤りの修正、④練習、⑤確認、のそれぞれに、担当と業務の確認者が決まっているかを表にしてください。決まっていないものは空欄にし、担当を推測で埋めないでください。」
10. REVIEW — AIの整理を確認する
- 表が、計画の元の文と合っているか
- AIが担当や時期を推測で埋めていないか
- 業務の確認者の欄が空欄のままになっていないか
11. 人間が判断すること
- 何を移し、何を移さないか
- 項目の意味の違いをどう扱うか、誤りをどう直すか
- 正しく移ったと言えるか。本番の移行に進んでよいか
12. 判断演習
あなたは、データ移行の担当として、業務の担当に初めて話を聞くことになりました。
「データを移すために、協力をお願いしたいこと」を、業務の担当に伝える形で3つ書いてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
データ移行は、選ぶ・変換する・直す・練習する・確かめるを含む仕事です。
データの意味を知る業務の担当と一緒に進め、プログラムの実行は、その一部にすぎません。