このユニットの結論
データ移行のリハーサル(練習)は、1回うまくいけば終わりではありません。
練習のたびに、対応のルール・データの汚れ・かかる時間・確かめ方の問題が見つかり、それを直したら、直したことをもう一度練習で確かめる必要があります。だから、何度も、少しずつ本番に近い条件で行います。
1. 何の話か
このユニットは、データ移行のリハーサルの話です。
本番の移行では、決められた時間の中で、すべてのデータを移し、正しく移ったことを確かめる必要があります。その前に、同じ作業を練習して、問題を見つけておきます。本番切替全体のリハーサルは 12-04 本番移行を事前練習する で扱います。このユニットでは、データ移行の部分に絞って考えます。
2. なぜ必要か
練習が少ないと、
- 対応のルールの誤りや、データの汚れに、本番の直前に初めて気づく
- 全部のデータを移すのにかかる時間が、本番まで分からない
- 移したあとの確かめ方(照合)の手順が固まらず、本番で確かめきれない
- 直した箇所が、ほかの箇所に影響していないかを確かめないまま本番を迎える
ということが起きます。
3. このユニットで分かること
- リハーサルを繰り返す理由
- 回を重ねるごとに本番へ近づける方法
- 回ごとに記録し、比べること
- リハーサルで、AIに任せてよいことと人間が決めること
4. 繰り返す理由
- 1回では見つからない問題がある:少ないデータでは出なかった値や組み合わせが、全部のデータで初めて出る
- 直したことを確かめる必要がある:対応のルールや汚れを直したら、その直しが正しいか、ほかに影響していないかを、もう一度移して確かめる
- 時間を確かめる必要がある:全部のデータを移すのに、どれだけかかるかを、本番に近い条件で測る
- 人が慣れる必要がある:本番で作業する人が、手順を体で覚える
- 確かめ方も練習する:移したあとの照合(11-06)を、本番と同じ手順で行ってみる
5. 回を重ねるごとに本番へ近づける
一般的には、次のように段階を追います。回数や区切り方は、プロジェクトで決めます。
| 回の例 | データ | 主に確かめること |
|---|---|---|
| 初期の練習 | 一部のデータ | 対応のルールと、変換の手順が動くか |
| 中間の練習 | 全部のデータ | 全部の値が変換できるか。汚れが残っていないか。かかる時間 |
| 最終の練習 | 本番に近い時点の全部のデータ | 本番と同じ手順・同じ人・同じ確かめ方で、時間内に終わるか |
最終の練習の結果は、本番に進んでよいかの判断の材料になります(12-05)。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- 10年分のデータ移行
- P-009 橋本 奈緒 — データ移行リーダー
- P-011 山下 恵 — 本番移行・運用リーダー
- 成果物に DAT-006 データ移行リハーサル結果、CUT-004 本番切替リハーサル結果がある
- M18 本番稼働
アステリア案件で、データ移行のリハーサルを何回、いつ、どの条件で行ったか、その結果は、正本に記載がありません。未確定
6. 回ごとに記録し、比べること
- 移したデータの種類と量、使ったデータの時点
- 変換できなかった値と、その件数
- 見つかった汚れと、その扱い
- 手順ごとにかかった時間
- 照合の結果と、説明のつかない差
- 前の回から直したことと、その結果
回ごとの記録を並べて比べると、問題が減ってきているか、同じ問題が繰り返し出ていないかが見えます。問題が減らないまま回数だけを重ねても、本番に近づいているとは言えません。
7. THINK — 前回はエラーが0件だった
3回目の練習で、変換のエラーが0件になりました。担当者は次のように言っています。
「前回の練習でエラーが0件になったので、これ以上の練習は要らないと思います。予定していた4回目は省きましょう。」
問題
4回目の練習を省いてよいでしょうか。
判断例を開く
判断
エラーが0件になったことだけでは決められません。
確認すること:
- 3回目は、全部のデータで、本番に近い条件で行ったか
- 移したあとの照合で、説明のつかない差は残っていないか
- 3回目のあとに、対応のルールやプログラムを直していないか(直したなら、それを確かめる練習が必要)
- 本番で作業する人・手順・時間で、通して行ったか
「エラーが出ない」は、「正しく移った」と同じではありません。照合の結果と、条件が本番に近いかどうかを合わせて判断します。
8. よくある失敗
- 少ないデータでの練習だけで、本番に進む
- 練習で見つかった問題を記録せず、次の回に同じ問題が出る
- 直したあとに練習をせず、直しが正しいか確かめない
- 移したあとの照合を、練習で行わない
- 練習の時期が本番の直前に集中し、見つかった問題を直す時間がない
9. 成果物との接続
- DAT-006 データ移行リハーサル結果:回ごとの条件・結果・直したことを記録する
- DAT-003 データ移行方針書:練習の回数と、回ごとに確かめることを決める
- DAT-005 データ品質・クレンジング一覧:練習で見つかった汚れを管理する
- CUT-004 本番切替リハーサル結果:データ移行を含む、本番切替全体の練習の結果
10. AI WORKFLOW — 回ごとの結果を比べさせる
AIは、回ごとの練習の記録を並べて比べる下書きに役立ちます。
指示例:
「次の1回目から3回目までの移行の練習の記録を比べ、①回ごとの変換エラーの件数と種類、②繰り返し出ている問題、③手順ごとの時間の変化、④照合で説明のつかない差、を表にしてください。本番に進んでよいかは判断しないでください。」
11. REVIEW — AIの比較を確認する
- 表の件数と時間が、元の記録と合っているか
- 回ごとに条件(データの量・時点)が違う場合、それを踏まえて比べているか
- AIが「十分」「本番に進める」と結論づけていないか
12. 人間が判断すること
- 練習の回数と、回ごとの条件
- 見つかった問題を直したと判断してよいか
- 練習の結果から、本番の移行に進んでよいか
本番移行承認は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。
13. 判断演習
あなたは、データ移行のリハーサルを計画する担当です。
「最終の練習が終わったら、本番に進んでよい」と言えるための条件を、3つ書いてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
移行のリハーサルは、見つけて、直して、直したことを確かめるために、何度も行います。
回ごとに記録して比べ、問題が減り、本番に近い条件で通せたことを確かめてから、本番に進みます。