このユニットの結論
古いシステムの項目と新しいシステムの項目を対応させるとき、項目の名前が同じだからといって、中身が同じとは限りません。
名前ではなく、実際のデータの値と、業務でその項目をどう使ってきたかを確かめて対応を決め、決めたことを業務の担当に確かめてもらうことが大切です。
1. 何の話か
このユニットは、項目の対応(マッピング)の話です。
古いシステムと新しいシステムでは、データの持ち方が違います。項目の名前、桁数、分け方、使えるコードが違うため、「古いこの項目は、新しいこの項目に、この変換をして入れる」という対応を、1つずつ決める必要があります。
2. なぜ必要か
対応を名前だけで決めると、
- 形式が合わず、データが入らない(桁数・文字の種類・日付の形など)
- 入りはするが、意味が変わってしまう(含まれる範囲が違う、区分の分け方が違う)
- 古いシステムで本来と違う使い方をしてきた項目が、そのまま持ち込まれる
ということが起きます。特に「入りはするが意味が変わる」ものは、エラーにならないため、気づくのが遅れます。
3. このユニットで分かること
- 対応の種類(そのまま・読み替え・分ける・まとめる など)
- 名前が同じでも中身が違う項目の見つけ方
- 対応を確かめる人と、その記録
- 対応づけで、AIに任せてよいことと人間が決めること
4. 対応の種類
| 種類 | 意味 | 例(教材上の例) |
|---|---|---|
| そのまま | 値をそのまま入れる | 社員番号 → 社員ID |
| 読み替え | コードや区分を、対応表で置き換える | 古い部署コード → 新しい組織コード |
| 分ける | 1つの項目を、複数の項目に分ける | 氏名 → 姓・名 |
| まとめる | 複数の項目を、1つにまとめる | 住所の複数の欄 → 1つの住所 |
| 計算する | 古い値から計算して入れる | 開始日と月数 → 終了日 |
| 決まった値を入れる | 古いシステムにない項目に、決めた値を入れる | 新しく必要になった区分に、初期の値を入れる |
どの種類でも、変換できない値(空・想定外の値)が出たときにどうするかも決めておきます。
5. 名前が同じでも中身が違う項目
一般的に、次のような違いがよくあります。
- 含まれる範囲が違う:古いシステムの「社員」には協力会社の人も含まれていたが、新しいシステムの「社員」は自社で雇っている人だけ
- 区分の分け方が違う:古いシステムの「状態」は3つ、新しいシステムは5つに分かれている
- 使い方が違う:古いシステムで、本来は別の用途の欄に、別の情報を書き込んできた
見つけ方:
- 項目の名前だけでなく、実際のデータの値を見る(どんな値が、何件あるか)
- 業務の担当に「この項目には、何を入れてきましたか」と聞く
- 新しいシステムの設計で、その項目がどう定められているか(DAT-002 データ定義書)と比べる
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- 10年分のデータ移行
- P-009 橋本 奈緒 — データ移行リーダー
- システムに SYS-01 新基幹システムがある
- 社員・組織のデータの正本は人事マスター(SYS-05 人事マスターシステム)。IF-03 社員・組織マスター連携:人事 → 新基幹
アステリア案件の移行元のシステムとその項目、項目の対応と変換のルールは、正本に記載がありません。未確定 上の「社員」の例は教材上の例で、アステリア案件で起きたことではありません。
6. THINK — 名前が同じなので「そのまま」
対応表を作っている担当者が、次のように言いました。
「古いシステムにも新しいシステムにも『顧客区分』という項目があるので、そのまま入れる対応にしました。値もどちらも2桁のコードです。」
問題
この対応で確定してよいでしょうか。
判断例を開く
判断
まだ確定できません。
確認すること:
- 2つのシステムで、同じコードが同じ意味か(「01」が両方で同じ区分を表すか)
- 古いシステムのデータに、新しいシステムにない値が入っていないか
- 古いシステムで、この項目を本来と違う使い方をしてこなかったか
- 業務の担当が、この対応を確かめたか
名前と形式が同じでも、中身が同じとは限りません。実際の値と使い方を確かめてから確定します。
7. よくある失敗
- 項目の名前だけを見て対応を決める
- 実際のデータを見ずに、設計書だけで対応を決める
- 変換できない値が出たときの扱いを決めていない
- 業務の担当が確かめないまま、対応を確定する
- 対応を変えたことを記録せず、移行のプログラムと対応表が食い違う
8. 成果物との接続
- DAT-004 データ移行対応表:項目ごとの対応・変換のルール・確認者を記録する
- DAT-002 データ定義書:新しいシステムの項目の意味と形
対応が正しかったかは、移行のあとの照合(11-06)で確かめます。
9. AI WORKFLOW — 確かめるべき対応を洗い出させる
AIは、対応表と実際のデータの見本を比べて、確かめるべき箇所を挙げる下書きに役立ちます。
指示例:
「次の対応表と、移行元のデータの値の一覧(項目ごとの値の種類と件数)を比べ、①対応表の変換で扱えない値がある項目、②空の値が多い項目、③値の種類が新しい項目の設計と合わない項目、を挙げてください。対応を確定しないでください。」
10. REVIEW — AIの洗い出しを確認する
- AIが挙げた箇所を、人が実際のデータで確かめたか
- AIが「そのままでよい」とした項目も、業務の担当が確かめたか
- データの見本を AI に渡してよいか(個人の情報の扱い)を、事前に確かめたか
11. 人間が判断すること
- 項目の対応と変換のルールを確定するか
- 中身が違う項目を、どう扱うか(変換する・分ける・移さない など)
- 変換できない値を、どう直すか
12. 判断演習
あなたは、対応表を作る担当です。
古いシステムの「状態」(3つの値)を、新しいシステムの「ステータス」(5つの値)に対応させることになりました。対応を決めるために、業務の担当に確かめることを3つ挙げてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
項目の対応は、名前ではなく、実際の値と業務での使い方で決めます。
中身が違う項目を見つけ、業務の担当が確かめてから確定し、決めたことを対応表に残します。