Unit 14-04(STAGE 14 の 4 / 6)

システムは完成しない

学習状況:未着手

このユニットの結論

本番稼働しても、初期の安定化を終えても、システムは「完成」しません。業務や制度が変わり、使っているソフトウェアも古くなるからです。

稼働後の改善・変更の受付・保守・更新を、誰が、どの予算と手続きで続けるかを、プロジェクトを閉じる前に決めて引き継ぐことで、システムを使い続けられる状態に保ちます。

1. 何の話か

大きなプロジェクトが本番稼働を迎え、稼働直後の集中対応も終わりました。プロジェクトの体制は縮小され、多くのメンバーが別の仕事に移っていきます。

ところが、利用部門からは「この画面をこう変えてほしい」「来年の制度の変更に合わせてほしい」という声が、稼働後も届き続けます。その声を、誰が受け止めるのでしょうか。

このユニットは、STAGE 14 の最後として、稼働した後もシステムを育て続けることを考えます。

2. なぜ必要か

稼働後の体制と手続きを決めないと、

ということが起きます。やがて「またシステムが古くなった」と、次の大きな刷新が必要になります。

3. このユニットで分かること

4. 稼働後に続く4つの仕事

仕事 何をするか きっかけの例(教材上の例)
改善 使いにくさや手間を減らす 同じ種類の問い合わせが続く
変更の受付 業務や制度の変化に合わせた要望を受け、対応を決める 組織の変更、新しい商品や取引の追加、法令や制度の変更
保守 不具合を直し、今の動きを保つ 稼働後に見つかった不具合
更新 使っているソフトウェアや基盤を新しくする ソフトウェアの提供元の支援の終了、セキュリティの修正

どれも、プロジェクトのように「始まりと終わり」がある仕事ではなく、ずっと続く仕事です。

5. 変更の要望を受け付けて決める流れ

稼働後の変更も、プロジェクトの途中の変更(04-06)と同じように、手続きに沿って決めます。一般的には次のような流れです。

  1. 受け付ける:窓口を1つにし、要望を記録する(REQ-005 変更要求書)
  2. 分ける:不具合の修正か、改善の要望か、業務や制度の変化への対応か
  3. 影響を見る:どのシステム・どの連携・どの業務に関わるか。費用と時間
  4. 決める:優先順位を付け、誰が承認するかを決めておく
  5. 実施して確かめる:テストし、本番に出し、効果を確かめる
  6. 記録する:変更の経過を台帳に残す(PRG-008 変更管理台帳)

変更は、決められた手順(必要なら計画停止を含む)に沿って本番に出します。出したあとは、日々の運用の手順(OPS-003 運用手順書)も変更に合わせて直します。

6. プロジェクトから運用へ引き継ぐもの

プロジェクトを閉じる前に、次を運用の担当へ引き継ぎます。

引継ぎの計画は、稼働直後の支援と合わせて作ります(OPS-009 稼働直後支援・運用引継ぎ計画)。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件に関係する記載

  • M18 本番稼働
  • M21 初期安定化完了
  • マルチベンダー(Vendor A〜D)
  • P-011 山下 恵 — 本番移行・運用リーダー
  • 成果物に OPS-009 稼働直後支援・運用引継ぎ計画がある

正本の時間軸は M21 の初期安定化完了までです。M21 より後のアステリア案件の体制・保守の契約・変更の受付の手続き・次の段階の計画は、正本に記載がありません。未確定 このユニットでは、M21 より後の案件の計画を想定しません。

7. THINK — プロジェクトの残りで全部やってしまう

(教材上の例)プロジェクトの体制が縮小される直前に、利用部門から改善の要望がまとまって届きました。プロジェクトの担当者が次のように提案しています。

「メンバーが残っているうちに、プロジェクトの残りの予算で全部対応してしまいましょう。」

問題

この提案を受け入れてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

そのまま受け入れるべきではありません。

確認すること:

  • 要望に優先順位は付いているか。すべてに対応する必要があるか
  • 急いで変更を入れることで、稼働したばかりの本番を不安定にしないか
  • プロジェクトの予算を、稼働後の改善に使ってよいか(誰が承認するか)
  • 今後も要望は届き続ける。そのための窓口・予算・体制は決まっているか

今届いた要望を片づけても、稼働後の要望を受ける仕組みがなければ、同じ問題が続きます。

8. よくある失敗

9. 成果物との接続

10. AI WORKFLOW — 要望の整理を手伝わせる

AIは、たまった要望を分類し、似たものをまとめる下書きに役立ちます。

指示例:

「次の変更の要望の一覧を、不具合の修正・改善・業務や制度の変化への対応・その他に分け、同じ内容のものをまとめてください。それぞれに関わりそうな業務を挙げ、確かめる必要があるものとして示してください。優先順位は付けないでください。」

11. REVIEW — AIの整理を確認する

  • 分類が正しいか(不具合を改善の要望として扱っていないか)
  • まとめた要望が、本当に同じ内容か(要望を出した人に確かめたか)
  • AIが優先順位や対応の可否を決めていないか

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — 技術的負債の棚卸しと、変更の安全性の指標

負債を一覧にして利子を見積もる

急いで作った部分、古くなった部品、テストのない処理、誰も中身を説明できない処理。こうした「あとで直すつもりのもの」を技術的負債と呼びます。放置すると、変更のたびに余計な時間と障害という利子がつきます。棚卸しして一覧にし、1 件ごとに「毎月いくらの利子(余計な時間、障害の件数)がかかっているか」を見積もります。利子の大きいものから返します。

返済を予算にする

業務からの要望と負債の返済は、同じ人が同じ時間で行います。「変更の作業量の 2 割は負債の返済に充てる」のように、割合で予算を決めておくと、要望に押し出されて返済がゼロになることを防げます。

変更の安全性を 4 つの数で見る

変更をどれだけの頻度で本番に出しているか。変更を決めてから本番に出るまでの時間。変更が原因の障害の割合(変更失敗率)。障害から復旧するまでの時間。この 4 つを月次で見ると、「変更が怖くて出せない」状態か、「安全に小さく出せている」状態かが分かります。世界で共有されている考え方では、この 4 つは DORA 指標と呼ばれます。

完成しない前提の体制

要望をどう受け、優先順位を誰が決め、どの頻度で出すかを、稼働後の体制として決めておきます。「完成したら終わり」の体制のままだと、最初の要望が来たときに誰が決めるかで止まります。

現場で確かめる問い

  • 技術的負債の一覧があるか。1 件ごとに、毎月の利子(余計な時間、障害)を見積もっているか
  • 返済に充てる作業量の割合が決まっているか。直近の月に実際に充てられたか
  • 変更の頻度、本番に出るまでの時間、変更が原因の障害の割合、復旧時間を月次で見ているか
  • 稼働後の要望を誰が受け、誰が優先順位を決め、どの頻度で出すかが決まっているか

アステリア案件の稼働後の変更の体制と、負債の扱いは、正本に記録がありません。記録なし

12. 人間が判断すること

  • 稼働後の改善・保守・更新の予算と体制
  • 変更の要望の優先順位と、承認する人
  • ソフトウェアの更新をいつ行うか
  • 次の大きな投資が必要かどうか

13. 判断演習

あなたは、プロジェクトから運用へ引き継ぐ計画を作る担当です。

プロジェクトを閉じた翌日に、利用部門から変更の要望が1件届いたとします。その要望が「受け付けられ、決められ、本番に出るまで」に関わる人と手続きを、引継ぎの計画に書くつもりで挙げてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

システムは、稼働した後も、改善・変更・保守・更新を続けて初めて使い続けられます。

プロジェクトを閉じる前に、その仕事を誰がどう続けるかを決めて引き継ぎます。

次に読むもの

本文で参照している成果物:OPS-009 稼働直後支援・運用引継ぎ計画、REQ-005 変更要求書、PRG-008 変更管理台帳、BUS-004 効果測定指標一覧、OPS-003 運用手順書

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手