このユニットの結論
「システムは何時間止められるか」の答えは、システム全体で1つではありません。
業務ごとに「いつ・どのくらい止まると、誰がどう困るか」を聞き取り、予定して止める時間と、予定外に止まったときに戻すまでの目標時間を分けて決めることで、設計と訓練で確かめられる要件になります。
1. 何の話か
このユニットは、非機能要件(06-01)のうち、システムが止まってよい時間の話です。
たとえば、朝の始業のときに社内のシステムが使えなかったとします。10分で戻れば「困ったね」で済むかもしれません。半日戻らなければ、請求書が出せない、取引先への回答が遅れる、といった問題になります。どこまでなら業務が耐えられるかを、作る前に決めておく必要があります。
2. なぜ必要か
止まってよい時間が決まっていないと、
- 作る人が、どこまで止まりにくい仕組みにすればよいか決められない
- 止まったとき、何時間以内に戻せばよいかが分からず、対応の優先順位が付けられない
- 定期的な保守で止めたいときに、いつ・どのくらい止めてよいかを毎回調整することになる
ということが起きます。止まらない仕組みほど費用がかかるため、「止まっては困る」だけでは決められません。
3. このユニットで分かること
- 予定して止める停止と、予定外の停止の違い
- 業務ごとに、止まってよい時間を聞き取る方法
- 「稼働率○%」という言い方の意味と注意点
- 停止の目標で、AIに任せてよいことと人間が決めること
4. 2種類の「止まる」
| 種類 | 意味 | 例(一般的な説明) |
|---|---|---|
| 計画停止 | 予定して止める | 保守の作業、ソフトウェアの更新、本番切替 |
| 計画外停止 | 予定せずに止まる | 機器の故障、処理の誤り、連携先の停止、災害 |
計画停止は、日時を選べます。業務の少ない時間帯に置き、事前に利用者へ知らせることができます。決めておくのは「いつなら止めてよいか」「一度にどのくらいまでか」「誰に、いつまでに知らせるか」です。
計画外停止は、日時を選べません。決めておくのは「止まってから、何時間以内に使えるように戻すか」という目標です。この目標をRTO(目標復旧時間)と呼びます(06-01)。
本番切替も計画停止の一つです。切替の日の流れは 12-02 システム停止から稼働まで で学びます。
5. 業務ごとに聞き取る
止まってよい時間は、システムの側からではなく、業務の側から決めます。聞き取りの観点の例です。
- その業務は、いつ使うか(毎日の始業直後、週に1回、期末だけ など)
- 止まったら、最初に困るのは誰か(社内の担当者か、取引先か)
- 止まっている間、手作業や別の方法で代わりができるか。できるなら、何時間までか
- 止まったことで、期限(支払い、報告、法令の届け出 など)に間に合わなくなるか
同じシステムの中でも、業務によって答えが違います。たとえば、毎日取引先とやり取りする業務と、社内で月に一度見る集計では、止まってよい時間が違います。業務ごとに重みを付け、重い業務から守り方を決めます。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- 大規模基幹システム刷新。SYS-01 新基幹システム、SYS-02 財務会計システム FIN-CORE など 11 のシステム
- 約36本のシステム連携
- M18 本番稼働、M21 初期安定化完了
アステリア案件の業務ごとの止まってよい時間、計画停止の時間帯、目標復旧時間、稼働率の目標は、正本に記載がありません。未確定 このユニットでは数値を決めず、決め方を学びます。
6. 「稼働率○%」の意味
稼働率(可用性)は、決めた期間のうち、使える状態だった時間の割合です。一般的な計算では、1年の時間に対して、
- 99% なら、止まってよい時間は1年でおよそ3日半
- 99.9% なら、およそ8時間46分
- 99.99% なら、およそ53分
になります。数字は一般的な計算で、アステリア案件の目標ではありません。
この言い方には注意点があります。
- 何を「使える」と数えるか:画面が開いても処理が遅すぎれば、業務では使えません
- 計画停止を含めるか:含めるかどうかで、同じ数字でも意味が変わります
- いつ止まるか:1年に合計1時間でも、始業直後に止まれば影響は大きく、夜中なら小さい
そのため、稼働率の数字だけでなく、「どの業務の時間帯に」「1回あたり何時間まで」も合わせて決めます。
7. THINK — 保守のために毎週止めたい
(教材上の例)運用の担当から、次の提案がありました。
「安定して動かすために、毎週日曜の朝に4時間、システムを止めて保守をしたいです。日曜なので誰も困らないはずです。」
問題
この提案をそのまま受け入れてよいでしょうか。
判断例を開く
判断
そのままでは決めません。
確認すること:
- 日曜に使う業務や利用者は本当にいないか(交代勤務、海外の拠点、取引先の画面など)
- そのシステムとつながる他のシステムは、その時間に動いていないか
- 毎週4時間という長さと頻度が、保守の中身から見て必要か
- 利用者へ、いつ、どの方法で知らせるか
「誰も困らないはず」は、確かめた結果ではありません。業務の担当と連携の担当に確かめてから、計画停止の枠として決めます。
8. よくある失敗
- システム全体に1つの目標だけを決め、業務ごとの違いを見ない
- 稼働率の数字だけを決め、計画停止を含めるか、何を「使える」とするかを決めない
- 目標復旧時間を決めたが、その時間で戻せるかを訓練で確かめていない
- 計画停止の時間帯を、連携先のシステムの担当に確かめずに決める
9. 成果物との接続
- REQ-003 非機能要件一覧:業務ごとの止まってよい時間と、その条件・確かめ方を管理する
- OPS-008 災害復旧計画・訓練結果:大きな障害のときに目標の時間で戻せるかを、計画と訓練の結果で示す
- OPS-007 サービス品質目標一覧:稼働後に守る稼働率などの目標を示す
10. AI WORKFLOW — 聞き取りの質問票を作らせる
AIは、業務の一覧から、止まったときの影響を聞き取る質問票の下書きに役立ちます。
指示例:
「次の業務の一覧について、業務ごとに、①使う時期と時間帯、②止まったときに最初に困る人、③代わりの方法の有無、④関係する期限、を業務の担当に確かめる質問を作ってください。止まってよい時間の数値は提案しないでください。」
11. REVIEW — AIの質問票を確認する
- AIが、止まってよい時間や稼働率の数値を書き足していないか
- 業務の重さを、一般論で決めつけていないか
- 連携先のシステムへの影響を聞く質問が抜けていないか
12. 人間が判断すること
- 業務ごとの止まってよい時間と、目標復旧時間
- 計画停止を置く時間帯と頻度
- 目標を満たすための費用を受け入れるか、目標を下げて業務の側で備えるか
13. 判断演習
あなたは、社内の経費精算のシステムの停止の目標を決める担当です(教材上の例)。
業務の担当に聞き取りをする前に、質問を4つ用意してください。「何時間止まってもよいですか」以外の質問にしてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
止まってよい時間は、予定して止める時間と、予定外に止まったときに戻す時間を分けて、業務ごとに決めます。
稼働率の数字だけでなく、どの時間帯に、1回あたり何時間までかを合わせて決め、訓練で確かめます。