Unit 06-05(STAGE 06 の 5 / 7)

「絶対に止まらない」は要件になるのか

学習状況:未着手

このユニットの結論

「絶対に止まらないこと」は、そのままでは要件になりません。満たしたかどうかを確かめる方法がなく、かける費用にも上限がないからです。

「止まりにくくする目標」と「止まったときに業務を続ける方法」の2つに分けて決めることで、確かめられて、費用とつりあう要件になります。

1. 何の話か

このユニットは、STAGE 06「壊れることを前提に設計する」のまとめです。

要件を決める場で、業務の側から「このシステムは絶対に止まっては困る」という声が出ることはよくあります。その気持ちはもっともです。しかし、この言葉をそのまま要件の一覧に書いても、作る人も、テストする人も、何をすればよいか分かりません。

2. なぜ必要か

「絶対に止まらない」をそのまま受け取ると、

ということが起きます。最後の点がいちばん危険です。どんなに備えても、システムはいつか止まります。

3. このユニットで分かること

4. 「絶対」が要件にならない理由

要件は、満たしたかどうかを確かめられる必要があります。

そこで実務では、「絶対に止まらない」という願いを、

という、確かめられる目標に言い換えます。

5. 費用とのつりあい

止まりにくくする方法には、たとえば、同じ仕組みを2つ用意して片方が止まっても動き続けるようにする(冗長化)、離れた場所に予備を置く、などがあります。どれも費用がかかり、止まりにくくするほど費用は急に増えていくのが一般的です。

つりあいを考えるときは、次の2つを比べます。

比べるもの 考えること
止まったときの損失 業務が止まる時間の長さ、取引先への影響、期限に間に合わない影響、信用
止まりにくくする費用 仕組みを作る費用、動かし続ける費用、保守の手間

損失より費用が大きいなら、止まりにくくするより、止まったときの備えにお金を使う方がよい場合があります。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件に関係する記載

  • 売上高 約5,000億円、従業員 約4,000名
  • 大規模基幹システム刷新、約36本のシステム連携
  • M18 本番稼働、M21 初期安定化完了

アステリア案件で「止まらないこと」をどの業務にどこまで求めたか、止まりにくくする仕組みの有無、止まったときの業務の続け方は、正本に記載がありません。未確定 会社の規模が大きいことは、すべての業務に最高水準が必要という意味ではありません。

6. 止まったときに業務を続ける方法

止まりにくくすることと同じくらい大切なのが、止まったときに業務をどう続けるかを決めておくことです。一般的な方法の例です。

どの方法も、止まってから考えたのでは間に合いません。手順と担当を決め、使う人が練習しておきます。障害のときの対応の決めごとは OPS-004 障害対応計画、大きな障害や災害のときの計画は OPS-008 災害復旧計画・訓練結果 にまとめます。

7. THINK — 「止まらない仕組みを入れたので、手作業の手順は要らない」

(教材上の例)受注の業務について、止まりにくくする仕組みを入れることが決まりました。そのあと、業務の担当から次の声が出ました。

「止まらない仕組みを入れたのだから、止まったときの手作業の手順を作る必要はないですよね。」

問題

手作業の手順づくりを省いてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

省くべきではありません。

確認すること:

  • 入れた仕組みは、どんな止まり方に備えたものか(機器の故障だけか、処理の誤りや連携先の停止にも効くか)
  • 仕組みが働かない止まり方が起きたとき、業務はどうなるか
  • 手作業の手順を、最低限どこまで作っておくか(受け付けの様式、戻ったあとの入力の担当)
  • 手順を、使う人が一度は試しているか

止まりにくくする仕組みは、止まる回数を減らしますが、ゼロにはしません。止まったときの備えは別に持ちます。

8. よくある失敗

9. 成果物との接続

10. AI WORKFLOW — 止まったときの続け方の案を広げさせる

指示例:

「次の業務について、システムが止まったときに業務を続ける方法の候補を、手作業で代わりをする・できることを減らす・後回しにする・知らせる、の観点で挙げてください。どの方法を採るかは決めないでください。業務の担当に確かめる質問も添えてください。」

11. REVIEW — AIの案を確認する

  • AIの案が、実際の業務の流れで使えるか、業務の担当に確かめたか
  • 取引先や法令の期限への影響が抜けていないか
  • AIが、止まってよい時間や費用の水準を決めていないか

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — 稼働率の数字と、直列の掛け算

稼働率を時間に直す

「99% 動く」は、年に約 3.7 日止まってよい、という意味です。99.9% なら年に約 8.8 時間、99.99% なら年に約 53 分です。小数点以下の 9 が 1 つ増えるごとに、必要な仕組み(二重化、切り替えの自動化、訓練)と費用は大きく増えます。「絶対に止まらない」は、この表のどこにも書けません。

直列は掛け算になる

利用者が業務を終えるまでに、認証、連携の基盤、業務のシステムを順に通るなら、全体の稼働率は各部品の掛け算です。99.9% の部品が 3 つ直列なら、全体は約 99.7% になり、年に約 26 時間です。全体の目標は、部品の目標より高くはなりません。目標を決めるときは、経路上の部品をすべて数えます。

計画停止を含めるか

夜間の更新作業で止める時間を「停止」に数えるかどうかで、数字は大きく変わります。先に定義を決めておかないと、あとで「約束と違う」になります。

要件の書き方を変える

「絶対に止まらない」の代わりに、「止まったら何分で、誰が、どの手順で戻すか」と「その間、業務はどう続けるか」を要件にします。この形なら、費用と釣り合わせて決められます。

現場で確かめる問い

  • 稼働率の目標は、年間の止まってよい時間に直すと何時間か。関係者がその時間を知っているか
  • 利用者が業務を終えるまでに通る部品をすべて数え、直列の掛け算をしたか
  • 計画停止を「停止」に含めるかどうかが、要件に書かれているか
  • 「止まったら何分で、誰が、どう戻すか」が、止まらないことの代わりに要件になっているか

アステリア案件の稼働率の目標と、計画停止の扱いは、正本に記録がありません。記録なし

12. 人間が判断すること

  • どの業務に、どこまで止まりにくさを求めるか
  • 止まりにくくする費用と、止まったときの損失のどちらを受け入れるか
  • 止まったときの業務の続け方と、その担当

13. 判断演習

業務の責任者から「うちの業務は絶対に止めないでほしい」と言われました。

この要望を、確かめられる要件に言い換えるために、責任者に聞く質問を3つ書いてください。そのうち1つは、止まったときの業務の続け方に関する質問にしてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

「絶対に止まらない」は、確かめられる目標と、止まったときの業務の続け方の2つに分けて要件にします。

止まりにくくする費用と、止まったときの損失を比べて、業務ごとに水準を決めます。

次に読むもの

本文で参照している成果物:REQ-003 非機能要件一覧、OPS-004 障害対応計画、OPS-008 災害復旧計画・訓練結果

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手