これは何か
非機能要件一覧は、システムが「何をするか」(機能)ではなく、「どれくらい速く・たくさん・止まらずに・安全に動くか」(非機能)についての要件を、条件と確かめ方と一緒に一覧にした成果物です。
非機能要件の考え方は 06-01 非機能要件とは何か、機能要件との違いは 04-03 機能要件と非機能要件 で学びます。
なぜ作るか
- 「速く」「止まらない」のような言葉だけの要望を、確かめられる要件にする
- 設計の担当が、どの水準を目指して設計すればよいかを分かるようにする
- テストで、どの条件で何を測ればよいかを決められるようにする
- 水準を上げると費用も増えるため、どこまで求めるかを判断した記録を残す
誰が使うか・いつ作るか
- 作る人:要件を取りまとめる担当と、システムの設計の担当(業務の担当に聞き取りながら)
- 確かめる人:業務の責任者、システムアーキテクト、運用の担当
- 使う人:設計・テスト・運用の担当
- 一般的には、機能の要件と同じ時期に作り始め、設計の段階で具体的な水準と確かめ方を詰めます
- アステリア案件の非機能要件の中身(性能・利用人数・止めてよい時間・失ってよいデータの範囲など)は、正本に記載がありません。未確定
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
非機能に関係する記載
- 従業員 約4,000名、10年分のデータ移行
- システム 11(SYS-11 監視・ログ基盤、SYS-08 認証・ID基盤 などを含む)
- P-008 黒田 健 — システムアーキテクト
- M18 本番稼働、M21 初期安定化完了
アステリア案件の性能の目標・条件、同時利用者数、止めてよい時間などは、正本に記載がありません。未確定 従業員数は、システムの利用者数ではありません。危機演習で扱う数値は、危機演習の中で扱います。
主な項目(列)
一般的には、1行に次の列を持ちます。
- 要件番号
- 分類:性能・利用の量・止めてよい時間・失ってよいデータ・安全・運用 など
- 対象:どの業務・画面・処理か
- 条件:いつ・どのくらいのデータ量・どのくらいの利用で
- 水準:満たすべき値(目標)
- 確かめ方:どのテストで、どう測るか
- 根拠:なぜその水準か(業務への影響、聞き取りの記録)
- 確定した人
教材用サンプル成果物の読み方を学ぶための例
教材用サンプル — 一覧の数行
この成果物は学習用サンプルです。FROZEN正本に記載されたCASE FACTと、成果物の読み方を学ぶための教材用サンプル値を区別して表示しています。
次の表は、非機能要件の書き方を学ぶための例です。条件・水準はすべて教材上の架空の例で、アステリア案件の要件ではありません。水準の値は「○」のように伏せ、書き方だけを示します。
| 要件番号 | 分類 | 対象 | 条件 | 水準 | 確かめ方 |
|---|---|---|---|---|---|
| REQ-NFR-0001 | 性能 | 案件の一覧画面 | 始業直後、同時に○人が一覧を開く。案件のデータは稼働○年後の見込みの量 | ○秒以内に表示 | 総合テストの性能試験 |
| REQ-NFR-0002 | 利用の量 | ログイン | 始業直後の○分間に○人がログインする | 全員がログインできる | 性能試験 |
| REQ-NFR-0003 | 止めてよい時間 | 案件の登録 | 業務時間中に止まった場合 | ○時間以内に使えるように戻す | 復旧の訓練 |
| REQ-NFR-0004 | 失ってよいデータ | 登録したデータ全般 | 大きな障害のとき | ○分前までのデータを取り戻せる | 復旧の訓練 |
| REQ-NFR-0005 | 運用 | 夜間の連携処理 | 毎日 | 翌朝の業務開始までに終わる | 総合テスト・移行のリハーサル |
読み方
- 「条件」の列が埋まっているか(条件のない水準は、確かめられない)
- データの量の条件が、稼働の直後だけでなく、将来の見込みも考えているか
- 「確かめ方」の列が埋まっていて、テストの計画とつながっているか
- 根拠と、確定した人が書かれているか
- 業務にとって大事な処理ほど、水準がはっきりしているか
書き方
- 業務の担当に、困る場面から聞く(「遅いと困るのはどの画面か」「止まると困るのはいつか」)
- 場面ごとに、対象・条件・水準を書く(06-02 で学んだ「場面・人数・操作・基準」)
- 水準ごとに、確かめ方を決める
- 水準を上げたときの費用を設計の担当に見積もってもらい、業務の責任者と決める
- 決めた水準と根拠を記録する
何を書いてはいけないか
- 「高速」「高可用」「十分な性能」など、数値も条件もない言葉
- 条件のない数値(どの操作を、どのデータ量で、何人が使うときか分からない)
- 確かめ方のない要件
どこを見るか
- 条件と水準がそろっているか
- データの量と利用の量の見込み
- 確かめ方と、テストの計画との対応
- 根拠と確定した人
- 費用との兼ね合いを判断した記録
赤信号
- 性能の行が「全画面○秒以内」の1行だけ
- 条件の列が空欄
- 確かめ方の列が空欄
- 業務の担当に聞いた記録がない
よくある失敗
- 機能の要件に比べて後回しにされ、設計が進んでから決める
- 条件を書かずに数値だけを決め、テストで何を再現すればよいか分からない
- 費用を見ずに高い水準を決め、あとで下げる
関係するUnit・成果物・危機演習
- Unit:06-01 非機能要件とは何か、06-02 何人まで利用できればよいのか、04-03 機能要件と非機能要件、10-04 性能をどう確認するのか
- 成果物:TST-005 性能試験結果報告書、ARC-006 設計判断記録、REQ-002 要件一覧
- 危機演習:この成果物を直接の題材にする危機演習はありません
AI WORKFLOW
AIは、言葉だけの要望を、確かめられる形に直す下書きに役立ちます。
「次の非機能の要望の一覧について、それぞれ①対象、②条件、③水準、④確かめ方、の欄に分け、書かれていない欄は空欄にしてください。数値は補わず、業務の担当に確かめるべき質問を添えてください。」
REVIEW
- AIが数値や条件を補って書いていないか
- AIの質問を、実際に業務の担当に確かめたか
- 「一般的な水準」を、そのまま今回の水準にしていないか
人間が判断すること
- 非機能の水準をどこまで求めるか(費用との兼ね合い)
- 条件(データの量・利用の量)の見込み
- 水準を満たせないときに、水準を下げるか、費用をかけるか
いつ使うか
この教材では STAGE 06|壊れることを前提に設計する の文脈で扱います。 アステリア案件での正式な作成・使用時期(月)は正本に記載がないため、未確定としています。
最後の問い
この一覧の各行は、「どの業務で、どの条件のとき、どの水準を満たせばよいか。それをどう確かめるか」まで書かれていますか?