このユニットの結論
非機能要件は、「システムが壊れたり混んだりしたときに、業務をどこまで守るか」を、数値と条件で約束するものです。
システムはいつか遅くなり、止まり、データを失う可能性があります。STAGE 06 は、そのことを前提に設計する考え方を学びます。
1. 何の話か
04-03 機能要件と非機能要件 では、非機能要件を「どのように動くか」の要件として学びました。
このユニットでは、STAGE 06「壊れることを前提に設計する」の入口として、非機能要件の中でも特に、
- 何人まで利用できればよいのか
- システムは何時間止められるのか
- どこまでデータを失ってよいのか
- 「絶対に止まらない」は要件になるのか
という問いを、どう考えるかを整理します。
2. なぜ必要か
業務部門に「システムは止まってもよいですか」と聞けば、多くの場合「止まっては困る」と答えます。
しかし、止まらない仕組みには費用がかかります。どこまで守るかを決めずに作ると、
- 必要以上に費用をかける
- 逆に、大事な業務が止まったときの備えがない
のどちらかになりがちです。
3. このユニットで分かること
- 非機能要件の代表的な4つの問い
- よく使われる言葉(RTO・RPO・可用性)の意味
- 非機能要件の目標を、誰が決めるのか
4. 代表的な4つの問い
| 問い | よく使われる言葉 | 意味 |
|---|---|---|
| 何人まで使えればよいか | 同時利用者数・処理量 | 一度に使う人数や処理の量の上限 |
| 何時間止められるか | RTO(目標復旧時間) | 止まってから、使えるように戻すまでの目標時間 |
| どこまでデータを失ってよいか | RPO(目標復旧時点) | 障害のとき、どの時点までのデータを取り戻せればよいか |
| どれくらい止まらずに動くか | 可用性 | 使える状態でいる時間の割合 |
どれも、業務ごとに答えが違います。請求の締めの日に止まる業務と、月に一度しか使わない業務では、必要な守り方が違います。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- 約120人規模のプロジェクト
- M18 本番稼働、M21 初期安定化完了
- STAGE 06 のUnit:06-01 非機能要件とは何か、06-02 何人まで利用できればよいのか、06-03 システムは何時間止められるのか、06-04 どこまでデータを失ってよいのか、06-05 「絶対に止まらない」は要件になるのか
アステリア案件の同時利用者数・RTO・RPO・可用性の目標値は、正本に記載がありません。未確定 このユニットでは数値を決めず、考え方を学びます。
5. 「絶対に止まらない」は要件か
一般的に、「絶対に止まらない」はそのままでは要件になりません。確かめる方法がなく、費用の上限もないからです。
実務では、
- どの業務を、
- どの時間帯に、
- どこまで止めずに、
- 止まったら何時間で戻すか
に言い換えます。言い換えることで、費用と守り方を比べられるようになります。
6. THINK — 全部の業務を最高水準で
業務部門から、「すべての業務について、止まらない・データを失わない水準にしてほしい」という要望が出ました。
問題
そのまま非機能要件にしてよいでしょうか。
判断例を開く
判断
そのままにはしません。
確認すること:
- 止まると業務や取引先に大きな影響が出る業務はどれか
- 止まっても、手作業などで一時的に回せる業務はどれか
- 水準を上げると、費用と作業はどれだけ増えるか
- 目標を満たしているかを、どう確かめるか
業務ごとに重みを付け、守り方を分けて考えます。
7. よくある失敗
- 「高い可用性」「速い応答」のように、数値のない言葉だけで決める
- 数値はあるが、どの業務・どの時間帯・どの条件かがない
- 目標を決めたが、確かめるテストの計画がない
- 費用を見ずに目標を決め、あとで削る
8. 成果物との接続
- REQ-003 非機能要件一覧:非機能要件の目標と条件を管理する
- OPS-007 サービス品質目標一覧:稼働後に守るサービスの品質の目標を示す
- OPS-008 災害復旧計画・訓練結果:大きな障害のときに戻す計画と、その訓練の結果
危機演習 CR06 性能目標2秒に対して32秒 は、性能の問題が見つかった場面を扱います(学習上の接続です。正式な対応関係ではありません)。
9. AI WORKFLOW — 業務ごとの影響を整理させる
指示例:
「次の業務一覧について、止まったときの影響(取引先・社内・法令・お金)を観点ごとに整理し、確認すべき質問を挙げてください。止まってよい時間やデータを失ってよい範囲の数値は提案しないでください。」
AIは、影響を整理する下書きや、業務部門への質問票づくりに役立ちます。
10. REVIEW — AIの整理を確認する
- 業務の重さを、AIが一般論で決めつけていないか
- 数値の目標を、提案として書き足していないか
- 業務部門に、実際の困りごとを確かめたか
11. 人間が判断すること
- 業務ごとの目標値(利用人数・停止時間・データ損失・可用性)
- 目標を満たすための費用を受け入れるか
- 目標を満たせない場合に、業務側で何を準備するか
12. 判断演習
次の2つの業務について、止まったときの影響を比べ、守り方をどう分けるかを考えてください。
- 毎日使う、請求データを作る業務
- 月に一度使う、社内向けの集計
数値を決める必要はありません。「何を確かめて決めるか」を書いてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
非機能要件は、壊れたときに業務をどこまで守るかの約束です。
「絶対に」ではなく、業務ごとに、数値と条件で決めます。