このユニットの結論
複数のシステムが同じデータを扱うとき、「このデータの正しい値は、どのシステムが持つのか(データの正本)」を決めておく必要があります。
正本が決まっていないと、システムごとに値が食い違ったとき、どちらを信じればよいか分かりません。
1. 何の話か
このユニットは、システムごとの担当範囲の話です。
大規模な刷新では、1つのシステムがすべてを持つことはまれです。顧客は営業のシステム、社員は人事のシステム、会計は会計のシステム、というように、データと機能を分担します。
2. なぜ必要か
担当範囲があいまいだと、
- 同じ顧客の住所が、2つのシステムで違っている
- どちらのシステムで直せばよいか分からない
- 片方だけ直して、もう片方に古い値が残る
ということが起きます。
経理にたとえると、同じ取引先の情報を、販売の台帳と支払の台帳で別々に管理し、どちらが正しいか決めていない状態です。
3. このユニットで分かること
- データの正本という考え方
- アステリア案件で、どのデータの正本がどのシステムにあるか
- 担当範囲の判断で、AIに任せてよいことと人間が決めること
4. データの正本とは
データの正本とは、そのデータについて「正しい値はここにある」と決めたシステムのことです。
ほかのシステムは、正本からデータを受け取って使います。値を直すときは、原則として正本で直し、その結果を連携で広げます。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件のデータの正本(抜粋)
- 顧客:営業管理システム
- 契約:営業管理システム
- 社員・組織:人事マスター
- 工数:勤怠・工数管理SaaS
- 案件・案件予算・案件原価:新基幹
- 請求:新基幹
- 正式な会計残高・正式な会計仕訳:FIN-CORE
- 経営分析:BI
システムを担当するベンダー
- Vendor A / ネクサスシステムズ — 新基幹アプリケーション
- Vendor B / クラウドブリッジ — クラウド基盤、ネットワーク、IAM、連携、CI/CD、監視
- Vendor C / ファイナンスシステムサービス — FIN-CORE、会計連携
- Vendor D / タイムリンク — 勤怠・工数管理SaaS
データの正本の全件は システム・連携 で確認できます。
5. 読み取れること(CASE FACTの読み方)
- 新基幹システムは、案件・原価・請求といった業務の中心のデータの正本を持つ
- 一方、会計の正式な残高と仕訳の正本は、新基幹ではなく FIN-CORE にある
- 顧客・契約・社員・工数は、新基幹の外にあるシステムが正本を持ち、新基幹はそれを受け取って使う
つまり、「新基幹に表示されている値」が、必ずしもそのデータの正本とは限りません。
6. THINK — 新基幹で顧客名を直せばよいか
新基幹システムの画面で、顧客名の誤りが見つかりました。
問題
新基幹システムの画面で直してよいでしょうか。
判断例を開く
判断
正本の考え方からは、まず正本側で直すことを検討します。
確認すること:
- 顧客の正本はどこか(正本では営業管理システム)
- 新基幹だけで直すと、次の連携で元の値に戻らないか
- ほかに、その顧客名を使っているシステムはどこか
- 直す権限を、誰が持っているか
実際の運用ルール(どこで誰が直すか)は、プロジェクトで決めます。アステリア案件での運用ルールは、正本に記載がありません。未確定
7. よくある失敗
- 正本を決めずに、複数のシステムで同じデータを直す
- 表示されている値と、正本の値を区別しない
- 正本のシステムを担当する会社と、使う側のシステムを担当する会社の間で、直す手順を決めていない
8. 成果物との接続
- ARC-003 システム責任分担表:システムごとの担当と責任を示す
- ARC-001 システム全体構成図:システムと連携の全体を示す
- DAT-001 データ一覧・管理責任表:データごとの管理責任を示す
9. AI WORKFLOW — 正本の食い違いを探させる
指示例:
「次のデータ正本の一覧と、システムごとの機能一覧を比べ、①正本以外のシステムでデータを更新する機能、②正本が決まっていないデータ、③2つのシステムが正本のように扱われているデータ、を挙げてください。どちらを正本にすべきかは提案しないでください。」
10. REVIEW — AIの指摘を確認する
- AIが、システムの名前や機能を取り違えていないか
- 「更新する機能」が、本当に更新なのか、表示だけなのか
- 最新の一覧を使っているか
11. 人間が判断すること
- どのデータの正本を、どのシステムにするか
- 正本以外のシステムで値を直すことを、例外として認めるか
- 正本を持つシステムの担当者と、使う側の担当者の役割分担
12. 判断演習
「案件原価」の正本は新基幹にあります。一方、「工数」の正本は勤怠・工数管理SaaSにあります。
工数から案件原価を計算するとき、工数の値に誤りが見つかったら、どこで直すべきかを考えてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
システムの担当範囲は、データの正本から考えます。
表示されている値ではなく、正しい値を持つシステムがどこかを確かめてから、直したり使ったりします。