このユニットの結論
複数の会社(ベンダー)が関わるプロジェクトでは、システムとシステムのつなぎ目で、どちらが何をするかを先に決めておく必要があります。
問題は、各社の担当範囲の真ん中ではなく、境目で起きます。
1. 何の話か
このユニットは、マルチベンダーのプロジェクトで、会社ごとの担当の境目をどう設計するかの話です。
2. なぜ必要か
各社は、契約で決まった範囲に責任を持ちます。その範囲の中では、各社とも一生懸命に作業します。
しかし、2社の範囲がぶつかるところ、たとえば「A社のシステムからB社のシステムへデータを送る連携」では、
- どちらがデータの形を決めるのか
- どちらが連携のテストを準備するのか
- 仕様を変えるとき、どの手続きで決めるのか
- 障害が起きたとき、どちらが先に調べるのか
が決まっていないと、作業が抜けたり、お互いに「相手の担当だ」と考えたりします。
3. このユニットで分かること
- 境目で決めておくこと
- アステリア案件で、境目がどこにあるか(正本から読み取れる範囲)
- 境目の設計で、人間が決めること
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
ベンダーと担当範囲
- Vendor A / ネクサスシステムズ — 新基幹アプリケーション(Vendor PM:P-A01 井上 健一)
- Vendor B / クラウドブリッジ — クラウド基盤、ネットワーク、IAM、連携、CI/CD、監視(Vendor PM:P-B01 吉田 圭介)
- Vendor C / ファイナンスシステムサービス — FIN-CORE、会計連携(Vendor PM:P-C01 大森 裕)
- Vendor D / タイムリンク — 勤怠・工数管理SaaS
会計への仕訳の連携の経路
- IF-05・IF-06・IF-07:新基幹 → 連携基盤 → FIN-CORE
4. 境目はどこにあるか(CASE FACTの読み方)
正本の担当範囲と連携の経路を重ねると、たとえば会計への仕訳の連携では、
- 送り出す新基幹アプリケーション(Vendor A)
- 途中の連携の仕組み(Vendor B の担当範囲に「連携」がある)
- 受け取る FIN-CORE と会計連携(Vendor C)
と、1本の連携の上に、3社の担当範囲が並ぶことが読み取れます。
ただし、各連携のどの作業をどの会社が担当するかという細かい分担は、正本に記載がありません。未確定
5. 境目で決めておくこと
一般的には、つなぎ目ごとに次を決めます。
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| 仕様の持ち主 | 連携のデータの形を、どちらが決め、どちらが承認するか |
| 仕様の変え方 | 仕様を変えるときの手続き(変更の手続き・04-06) |
| テスト | 連携のテストを、どちらが準備し、どちらが結果を確かめるか |
| 障害対応 | 連携が失敗したとき、どちらが最初に調べるか |
一般的には、発注者がこの表の空欄を埋める役割を持ちます。各社に任せきりにすると、境目は誰のものでもなくなります。アステリア案件で誰がこの分担を決めるかは、正本に記載がありません。未確定
6. THINK — テストのデータは誰が用意するのか
2社にまたがる連携のテストが、来週に迫っています。ところが、テストに使うデータを送る側・受け取る側のどちらが用意するかが決まっていませんでした。
問題
両社に「協力して準備してください」と伝えれば十分でしょうか。
判断例を開く
判断
それだけでは、どちらも「相手が用意するだろう」と考えて止まるおそれがあります。
確認すること:
- テストのデータを、どちらが用意し、どちらが中身を確かめるか
- テストの結果を、誰が合格と判断するか
- 失敗したとき、どちらが最初に調べるか
- 決めたことを、どこに書いて両社で共有するか
境目の作業は、名前を付けて担当を決めないと、誰の作業にもなりません。
7. よくある失敗
- 各社の担当範囲だけを決め、境目の作業を決めない
- 境目の決めごとを、各社の担当者同士の口約束にする
- 連携の仕様を、どこで管理するかを決めていない
- 発注者が、境目の管理を各社に任せきりにする
8. 成果物との接続
- ARC-003 システム責任分担表:システムと会社・役割の分担を示す
- ARC-004 システム連携一覧:連携ごとの送る側・受け取る側を示す
- PRG-004 役割・責任分担表:判断ごとの役割を示す
複数の会社が関わる場面は、危機演習の中でも扱います。
9. AI WORKFLOW — 境目の決めごとの抜けを探させる
指示例:
「次の連携一覧とシステム責任分担表を重ね、連携ごとに、仕様の持ち主・仕様の変え方・テストの担当・障害時の一次対応が決まっているかを表にしてください。決まっていない項目は空欄のままにし、推測で会社名を入れないでください。」
10. REVIEW — AIの表を確認する
- 会社と担当範囲の対応を、正しく読んでいるか
- 空欄を、AIが推測で埋めていないか
- 契約の内容と食い違っていないか(契約書そのものは人が確かめる)
11. 人間が判断すること
- 境目の作業を、どの会社に担当してもらうか
- 連携の仕様を、誰が決めて管理するか
- 担当の追加が契約の範囲外になる場合、どう扱うか
ベンダーへの追加の依頼や、契約上の扱いは、人間が判断します。
12. 判断演習
IF-04 工数連携(勤怠・工数SaaS → 連携基盤 → 新基幹)について、関わる会社を CASE FACT から挙げ、境目で決めておくべきことを表の5項目に沿って書いてください。
細かい分担は正本にないため、「未確定」の項目は未確定のまま書いてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
マルチベンダーの問題は、境目で起きます。
境目ごとに、仕様・仕様の変え方・テスト・障害対応の担当を決め、発注者が管理します。