CR03・M5.5
Vendor AとVendor Cが責任を押し付け合う
ここまでの学習
Stage 1 症状
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
M5.5 2社の主張が食い違っている
Vendor A と Vendor C が、互いに「相手の責任だ」と主張しています。
| Vendor | 担当 |
|---|---|
| Vendor A(ネクサスシステムズ) | 新基幹アプリケーション |
| Vendor C(ファイナンスシステムサービス) | FIN-CORE、会計連携 |
TRAINING UIこのケースで分からないこと
具体的な症状(何が合わなかったのか、どこで分かったのか)の記録は、このケースの正本(baseline)にはありません。記録なし
2社がそれぞれ何と言ったのかも、記録がありません。記録なし
この演習では、記録のないことを想像で補わずに進めます。
TRAINING UI演習の問い
2社が互いに相手の責任だと言っています。
あなたは最初に、どちらの言い分を聞きに行きますか。それとも、別の何かを確かめに行きますか。
「どちらが悪いか」を決める前に、2社が同じものを前提に話しているかを確かめる必要はないでしょうか。
Stage 2 最初の資料
2社が作業の前提にしている仕様書を並べます。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
参照している IF仕様の版
| Vendor | 参照している IF仕様 |
|---|---|
| Vendor A | v1.3 |
| Vendor C | v1.4 |
どの連携の IF仕様なのか、v1.3 と v1.4 で何が違うのかは、正本に記録がありません。記録なし
TRAINING UI資料の読み方
この資料から言えること
- 2社は、同じ IF仕様の異なる版を前提に作業している
- 2社の主張の食い違いの少なくとも一部は、版の違いで説明できる可能性がある
まだ言えないこと
- どちらの版が、今有効な版なのか
- 版の違いが、食い違いの原因そのものなのか
- なぜ2社で参照している版が違うのか
- どちらかが「古い版を使った」と言えるのか
TRAINING UI演習の問い
THINK
番号が新しい版が、正しい版だと言えるでしょうか。
版の番号だけで判断せず、その版がどういう状態の版なのかを確かめる方法を考えてください。
Stage 3 仮説整理
「Vendor A が悪い」「Vendor C が悪い」の二択にせず、発注者であるアステリア側も含めて原因の候補を並べます。
LEARNER HYPOTHESISあなたが立てる仮説。事実ではありません
A. Vendor A 側の問題
Vendor A が、最新の版を確かめずに作業した。
- 確かめたいこと: 今有効な版を知る手段が、Vendor A にあったか
B. Vendor C 側の問題
Vendor C が、まだ有効になっていない版で作業した。
- 確かめたいこと: v1.4 がどういう状態の版か
C. 発注者(アステリア)側の管理の問題
どの版が有効かを、関係する会社すべてに同じように知らせる仕組みがなかった。
- 確かめたいこと: 版の状態と、各社への伝達の記録
TRAINING UI証拠を要求する
次に欲しい証拠
- v1.4 はどういう状態の版か
- 版の状態は誰が決め、どこに記録されているか
- 各社に、何が、いつ伝わったか
AI WORKFLOW
この危機では、AI に責任の所在を判定させません。どちらの会社に責任があるかは、合意や記録にもとづいて人間が判断することです。
AI に使ってよいのは、仮説ごとに必要な証拠を整理する作業です。
AI へ渡す情報
- M5.5、2社の担当範囲、2社が参照している版(v1.3 / v1.4)
- 上の3つの仮説
AI へ渡さない情報
- どちらかの会社に不利な推測や、会社への評価
AI への問いの例(演習用の例です。ケースの中で実際に使われた指示文ではありません)
「次の3つの仮説について、それぞれを支持する証拠と否定する証拠が何になるかを整理してください。どの会社に責任があるかは判定しないでください。」
REVIEW
AI が「Vendor A が最新版を確認すべきだった」と、片方の責任として答えることがあります(演習用に想定した回答の例です)。
この回答は、まだ仮説です。
- Vendor A に、今有効な版を知る手段があったかを確かめていません
- 版の状態と、各社への伝達の記録を見ていません
AI の回答が挙げた「必要な証拠」が、実際に記録として確かめられるものかどうかを、人間が一つずつ確認してください。責任の判定を含む回答は、そのまま採用しません。
Stage 4 追加証拠
v1.4 の状態を確認します。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
v1.4 は承認済みの版です。
誰が、いつ承認したのかは、正本に記録がありません。記録なし
TRAINING UI仮説の見直し
- 仮説 B(Vendor C が、まだ有効になっていない版で作業した)は、この事実で弱まります。
- 仮説 A(Vendor A が、最新の版を確かめずに作業した)が、強まったように見えます。
TRAINING UI演習の問い
THINK
承認済みの v1.4 があるのに、Vendor A は v1.3 を参照していました。
これは Vendor A の確認不足だと、ここで断定してよいでしょうか。
「承認済み」という事実だけで、Vendor A が v1.4 を知り得たと言えるかを考えてください。
AI WORKFLOW
AI へ渡す情報: 3つの仮説と、「v1.4 は承認済み」という事実
AI への問いの例(演習用の例です)
「v1.4 が承認済みだと分かりました。3つの仮説の確からしさはどう変わりますか。まだ確かめていないことも挙げてください。」
検証のしかた: AI が「Vendor A の責任が確定した」と答えた場合は、Vendor A が承認済みの版を知り得たかという確認が抜けています。人間がその抜けを指摘し、結論を保留します。
Stage 5 決定的証拠
Vendor A が承認済みの v1.4 を受け取ったことを示す記録を確認します。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
v1.4 は承認済みですが、Vendor A への配布記録はありません。
TRAINING UI資料の読み方
ここで何が言えるか
承認済みの版が、Vendor A に届いたことを示す記録がありません。
「Vendor A が最新の版を確かめなかった」とだけ言うのは、難しくなりました。
ここで短絡してはいけないこと
- 「配布記録がない」は、「配布されなかった」とも「Vendor A が知らなかった」とも同じではありません。Vendor A が v1.4 を知っていたかどうかは、正本に記録がありません。記録なし
- 「では、配布しなかった人が悪い」と、責任を別の誰かに移すだけで終わらせないでください。
TRAINING UI演習の問い
THINK
配布の記録を残すのは、誰の役割だったのでしょうか。その役割は、決まっていたのでしょうか。
AI WORKFLOW
AI へ渡す情報: 参照している版(v1.3 / v1.4)、v1.4 が承認済みであること、Vendor A への配布記録がないこと
AI への問いの例(演習用の例です)
「配布記録がないという事実から、断定できることと断定できないことを分けてください。」
検証のしかた: 「記録がない=配布されていない」と断定している箇所があれば、人間が差し戻します。
Stage 6 真因
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
真因
正式仕様、変更配布責任、責任境界が曖昧でした。
TRAINING UI真因を3つに分けて読む
正本の真因は上の1文です。演習では、3つの曖昧さに分けて読みます。
- 正式仕様が曖昧 どの版が今有効な正式仕様なのかを、全員が同じ方法で確かめられませんでした。
- 変更配布責任が曖昧 承認された変更を、誰が、誰に届け、届いたことを誰が記録するのかが決まっていませんでした。
- 責任境界が曖昧 2社にまたがる仕様について、どこまでがどちらの責任なのかが明確ではありませんでした。
そのため、Vendor A も Vendor C も「自分は手元の仕様どおりに作った」と言える状態になり、責任の押し付け合いになりました。
重要
CR03 の真因は、どちらかの会社の技術的な誤りではありません。
誰が配布を担当するはずだったのかは、正本に定めがありません。記録なし 真因は「決まっていなかったこと」そのものです。
Stage 7 対応・成果物更新
最初にすること
責任の所在を決める前に、今有効な正式仕様がどれかを、関係者全員で同じ認識にそろえます。
どのような対応をとったのか、その結果どうなったのかは、正本に記録がありません。記録なし ここでは、何を判断する必要があるかを考えます。
人間が判断すること
AI ではなく、人間が判断します。
- どの版を正式仕様とするか。それを誰が決め、どう宣言するか
- v1.3 を前提に進んでいた作業をどう扱うか。影響の確認を誰がするか
- 2社にどのような追加対応を求めるか。費用や契約上の扱いをどうするか(契約の内容は正本に記録がありません)
- これから承認される変更を、誰が配布し、受け取ったことをどう記録するか
- 2社にまたがる仕様の責任境界をどこに書き、誰が承認するか
AI に任せてよいこと・任せてはいけないこと
任せてよいこと(下書きとして。最終確認は人間)
- 版と版の差分表づくりの補助
- 関係者・配布先の一覧の下書き
- 責任分担表の下書き
任せてはいけないこと
- 正式仕様の決定
- 責任の所在の判定
- ベンダーへの要求内容の決定
AI への問いの例(演習用の例です)
「承認済みの変更を、関係するすべてのベンダーに届け、受領を確認するための記録項目の案を作ってください。担当者の欄は空欄にしてください。」
検証のしかた: AI が担当者名や組織名を埋めていたら削除します(担当は人間が決めます)。記録項目が、3つの曖昧さのどれを解消するのかを、人間が対応づけて確認します。
成果物で見直す観点
- 2社にまたがる仕様の責任境界
- 連携ごとの仕様の正式版
- 承認された変更の配布先と配布記録
- 変更を配布する責任者
学習上の接続(正式な対応関係ではありません):
Stage 8 / 8
Stage 8 再発防止
3つの曖昧さを、2社が作業を始める前に解消しておく仕組みを考えます。
正式仕様
- 版ごとに状態(作成中・承認済み・廃止 など)を持たせる
- 今有効な版を、1か所で確かめられるようにする
変更配布
- 承認された変更の配布先・配布日・受領確認を記録する
- 配布の責任者を決めておく
責任境界
- 2社以上にまたがる仕様は、どちらが何を担当するかを最初に書いておく
- 境界を承認する人を決めておく
AI WORKFLOW
AI へ渡す情報: 正本の真因と、あなたが書いた再発防止策
AI への問いの例(演習用の例です)
「この再発防止策は、正式仕様・変更配布責任・責任境界の3つの曖昧さを、それぞれ解消していますか。解消していないものを指摘してください。」
検証のしかた: AI の指摘が3つの曖昧さのどれに対応するかを、人間が確認します。「注意する」「徹底する」だけの策になっていないかも、人間が見ます。どの策を、誰の承認で、いつから運用するかは人間が決めます。
最後の問い
この問題を、2社が作業を始める前に見つけるには、何が必要だったでしょうか。
もし配布記録が残っていたら、M5.5 の押し付け合いは起きたでしょうか。
CR03で覚えてほしいこと
複数の会社が関わる開発では、「どちらが悪いか」より先に、同じものを前提にしているかを確かめます。
承認することと、承認したものが全員に届いたことを確かめることは、別の仕事です。
学習上の接続(正式な対応関係ではありません):
LEARNER HYPOTHESISあなたの考え。事実ではありません
Stage 8 の記録
学習状況
状態:未着手