これは何か
プロジェクト憲章は、プロジェクトが正式に始まるときに、「目的・範囲・責任者・大きな節目・前提と制約」を短くまとめ、スポンサー(プロジェクトを後ろ盾として支え、最終的な責任を負う経営層の人)が承認する成果物です。
細かい計画書ではありません。プロジェクトに関わる全員が同じ出発点に立つための、いわば「約束の文書」です。
なぜ作るか
- プロジェクトを正式に始め、責任者に権限を与える根拠になる
- 120人規模になっても、全員が同じ目的と範囲を共有できる
- 途中で「これはプロジェクトの範囲か」と迷ったとき、立ち返る基準になる
- 計画書(PRG-002)や体制図(PRG-003)など、後に作る文書の土台になる
誰が使うか・いつ作るか
- 作る人:プロジェクトの責任者(プログラムマネージャーなど)と PMO が下書きし、スポンサーが承認する
- 読む人:プロジェクトの全員。新しく参加した人は最初に読む
- 一般的には、投資の承認(BUS-002)の後、正式なキックオフのときに作ります
- アステリア案件の憲章の内容・作成者・承認の日付は、正本に記載がありません。未確定
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
憲章に関係する記載
- 大規模基幹システム刷新。約120人規模のプロジェクト
- 約1,500件の要件、約36本のシステム連携、10年分のデータ移行、マルチベンダー、AI活用あり
- M-6 構想開始、M0 正式キックオフ、M18 本番稼働、M21 初期安定化完了
- P-001 佐伯 隆志 — CFO/プロジェクトスポンサー
- P-002 高瀬 真理 — CIO/IT統括責任者
- P-003 西村 俊介 — プログラムマネージャー
- P-004 田辺 彩 — PMOリーダー
- AIは意思決定責任者ではなく、人間が管理する作業実行・支援手段とする
正本にあるのは、規模・節目・人物の役割と、AIの位置づけです。プロジェクトの目的の文、成功の基準、予算、権限の範囲、対象外とするものは、正本に記載がありません。未確定
主な項目
一般的には、次の項目を1〜数ページにまとめます。
- 目的:何のためのプロジェクトか(投資企画書の目的を引き継ぐ)
- 成功の基準:何ができたら成功と言えるか
- 範囲:対象にするもの、しないもの
- 大きな節目:開始・本番稼働・完了などの時期
- 体制と責任者:スポンサー、責任者、主な役割
- 責任者の権限:責任者が自分で決めてよいことと、スポンサーの承認が必要なこと
- 前提と制約:予算、期限、使う仕組み、守るべき方針(AIの使い方など)
- 主なリスク:始める時点で分かっている大きなリスク
- 承認:スポンサーの承認と日付
教材用サンプル成果物の読み方を学ぶための例
教材用サンプル — 憲章の骨組み
この成果物は学習用サンプルです。FROZEN正本に記載されたCASE FACTと、成果物の読み方を学ぶための教材用サンプル値を区別して表示しています。
次の表は、憲章の各項目に「何を書くか」の例です。すべて教材上の例で、アステリア案件の憲章の内容ではありません(正本にある事実は、上の CASE FACT だけです)。
| 項目 | 書き方の例(教材上の例) |
|---|---|
| 目的 | 「案件ごとの採算を、月の途中でも見られる状態にする」のように、実現したい状態で書く |
| 成功の基準 | 「稼働後の決めた時期までに、決めた指標を満たす」のように、確かめられる形で書く |
| 範囲 | 対象の業務・システムと、対象にしないもの |
| 大きな節目 | 構想開始、正式キックオフ、本番稼働、安定化の完了など |
| 体制と責任者 | スポンサー、責任者、PMO、各分野のリーダー |
| 責任者の権限 | 「範囲の変更はスポンサーの承認。範囲内の優先順位は責任者が決める」のように書く |
| 方針 | AIの使い方など、全員が守ること |
読み方
- 目的が「システムを作ること」ではなく、「実現したい状態」になっているか
- 成功の基準が、確かめられる形になっているか
- 対象にしないものが書かれているか
- 責任者が自分で決めてよいことと、上に上げることの境目が書かれているか
- スポンサーの承認と日付があるか
書き方
- 投資企画書の目的・範囲を引き継ぎ、プロジェクトの言葉に置き換える
- 成功の基準を、確かめる時期と指標で書く
- 対象にしないものを、はっきり書く
- 責任者の権限と、スポンサーに上げる判断を書く
- 短く保つ(細かい計画は計画書へ)
- スポンサーの承認を得て、全員が読める場所に置く
何を書いてはいけないか
- 承認されていない予算・期限を、決まったこととして書く
- 細かい作業の計画(憲章が長くなり、誰も読まなくなる)
- 「関係者全員で決める」のような、責任者のはっきりしない書き方
どこを見るか
- 目的と成功の基準が対応しているか
- 範囲の外にあるものが書かれているか
- 責任者の権限の範囲が書かれているか
- 大きな節目が、他の文書(全体スケジュールなど)と一致しているか
- スポンサーの承認があるか
赤信号
- 目的が「新システムの導入」だけ
- 成功の基準がない、または「予定どおり稼働すること」だけ
- 責任者の権限が書かれておらず、何でもスポンサーに上げることになっている
- 承認されないまま、プロジェクトが進んでいる
よくある失敗
- キックオフで配ったきり、誰も読み返さない
- 範囲や節目が変わっても憲章を改訂せず、他の文書と食い違う
- 成功の基準がないため、稼働後に「成功したのか」を誰も説明できない
関係するUnit・成果物・危機演習
- Unit:03-01 誰が最終責任を持つのか、00-02 アステリア刷新プロジェクトを知る、00-03 プロジェクトとプログラムの違い、03-03 誰が決め、誰が実行するのか
- 成果物:BUS-002 システム投資企画書、PRG-004 役割・責任分担表、PRG-005 全体スケジュール
- 危機演習:この成果物を直接の題材にする危機演習はありません。プロジェクトの初期の判断が問われる場面は CR01 要件定義が終わらない で体験します(学習上の接続です。正式な対応関係ではありません)
AI WORKFLOW
AIは、憲章と他の文書の食い違いを探す下書きに役立ちます。
「この憲章と全体スケジュールを比べ、①節目の時期、②範囲、③責任者の名前、が食い違っている箇所を挙げてください。どちらが正しいかは判断しないでください。」
REVIEW
- AIが挙げた食い違いが、元の文書で本当に食い違っているか
- AIが目的や成功の基準を書き換えていないか
- 食い違いをどちらに合わせるかを、AIが決めていないか
人間が判断すること
- プロジェクトの目的・成功の基準・範囲
- 責任者に与える権限
- 憲章を承認するか、改訂するか
いつ使うか
この教材では STAGE 03|120人をどう動かすのか の文脈で扱います。 アステリア案件での正式な作成・使用時期(月)は正本に記載がないため、未確定としています。
最後の問い
新しく参加した人がこの憲章だけを読んで、「このプロジェクトは何を目指し、誰が責任を持ち、何をしないのか」を答えられますか?