Unit 00-02(STAGE 00 の 2 / 6)

アステリア刷新プロジェクトを知る

学習状況:未着手

このユニットの結論

大規模システム開発では、最初から細かい技術を覚えるより先に、「誰が、何のために、どの業務・システム・データを、どの期間で変えるのか」をつかむことが重要です。

アステリア刷新プロジェクトは、1つのアプリを作る話ではありません。

業務、要件、設計、プログラム、データ、他システム、テスト、運用がつながった大きな変革プロジェクトです。

1. 何の話か

この教材では、架空企業「アステリア株式会社」の大規模基幹システム刷新を追いながら学びます。

アステリア株式会社は、

という設定です。

今回の刷新プロジェクトでは、

します。

時間軸は、

です。

2. なぜ最初に全体像が必要なのか

大規模プロジェクトでは、自分の担当だけ見ていると判断を誤ります。

たとえば「請求処理を変える」という要件でも、

へ影響する可能性があります。

大規模開発では、

1つの変更がどこまでつながるか

を見る必要があります。

3. プロジェクトはつながっている

この教材では、次の連鎖を何度も使います。

  1. 業務
  2. 要件
  3. 設計
  4. プログラム
  5. データ
  6. 他システム
  7. テスト
  8. 運用

たとえば業務ルールが変われば、要件が変わり、設計が変わり、コードが変わり、テストも変わるかもしれません。

その変更が外部システムへデータを渡す処理なら、相手システムとの調整も必要です。

4. THINK — 「自分の担当だけ終わればよい」?

あなたはデータ移行担当です。

自分の移行プログラムは正常に動き、予定件数のデータを新システムへ投入できました。

しかし、新システム側の業務担当は、「一部のデータが、業務の画面でそのままでは使えない」と指摘しています。

問題

移行プログラムが正常終了したので、データ移行は完了と判断してよいでしょうか。

判断例を開く

判断

まだ完了とは言えません。

確認すべきなのは、

  • 件数
  • 値
  • データの意味
  • 業務で利用可能か
  • 後続システムが正しく解釈できるか

です。

プログラムが動いたことと、プロジェクトとして正しい状態になったことは別です。

5. 120人は同じものを見て仕事をする

約120人が口頭だけで判断を共有することはできません。

そこで、

などの成果物を使います。

成果物の目的は、文書を増やすことではありません。

多くの人が同じ事実を見て判断できる状態を作ることです。

このプロジェクトでは70種類のプロジェクト成果物を扱い、そのうち29種類を重点成果物として扱います。(成果物一覧)

6. システムだけでなくデータを見る

画面が正常でも、データが正しいとは限りません。

また、自システムが正常でも、連携先が止まっていれば業務は完了しないことがあります。

そのため、

  1. 画面
  2. 処理
  3. データ
  4. 連携
  5. 業務結果

まで見ます。

この考え方は、後のデータ移行、システム連携、本番障害のユニットにつながります。

7. AI WORKFLOW — AIはどこで使えるか

AIは大規模プロジェクトで、

  • 文書の整理
  • 要件の重複候補抽出
  • 設計レビュー
  • コード生成
  • テスト生成
  • ログ分析
  • 差分確認
  • リスク候補抽出

などに利用できます。

ただし、

AIが速く作業できることと、AIの判断が正しいことは別です。

たとえば「2ファイルだけ変更する予定」だった作業で、AIが17ファイルを変更したとします。

テストが全部PASSしていても、

「なぜ17ファイル必要だったのか」

は確認しなければなりません。

8. REVIEW — AIの仕事を何で確認するか

AIをレビューするときは、

  • 指示した範囲を超えていないか
  • 正本にない設定を作っていないか
  • 変更理由を説明できるか
  • テストが本当に重要な失敗を検出できるか
  • データや本番環境へ不要な影響がないか

を確認します。

「AIが成功と言った」「テストがPASSした」

だけでは完了にしません。

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — 「完了」を段階ごとに定義する

完了は 1 つではない

このユニットの演習は、「自分の作業が終わった」と「プロジェクトとして完了した」の区別でした。実務では、この区別を言葉で決めておきます。世界で共有されている考え方では「完了の定義(Definition of Done)」と呼ばれます。作業の種類ごとに「何がそろえば完了と言うか」を一覧にし、全員が同じ一覧を使います。

段階ごとに条件を重ねる

完了の定義は、段階ごとに重ねます(教材上の例)。

  • 開発の完了:コードがあり、レビューを通り、担当のテストが通っている
  • 機能の完了:関係する要件がすべて確かめられ、他システムとの受け渡しが確かめられている
  • 移行の完了:件数・値・意味が確かめられ、業務の担当が画面で使えることを確かめている
  • 稼働に向けた完了:運用の手順と引き継ぎが終わり、未解決の課題に扱いが決まっている

下の段階が終わっても、上の段階は終わっていません。報告では、どの段階の完了かを添えます。

「完了」が戻った回数を数える

完了と報告されたあとで、やり直しになった件数を数えます。この数が多い作業の種類は、完了の定義があいまいか、確かめる人が足りていない印です。数えるだけで、報告の言葉が変わります。

定義は実際の問題から育てる

完了の定義は、最初から正しくは書けません。やり直しが起きたとき、「どの条件があれば防げたか」を一覧に足します。ただし、条件が増えすぎると誰も守らなくなるため、実際に起きた問題から足すことを原則にします。

現場で確かめる問い

  • 「完了」の意味が、作業の種類ごとに言葉で決まっているか。決まっていないなら、誰がどう判断しているか
  • 報告の「終わりました」に、どの段階の完了かが添えられているか
  • 完了と報告されたあとで戻った件数を、作業の種類ごとに数えたことがあるか
  • 完了の定義を最後に見直したのはいつか。実際のやり直しから足した条件はあるか

アステリア案件で完了の定義がどう決められ、どの段階で使われたかは、正本に記録がありません。記録なし

9. 人間が判断すること

最終的に人間が決めるものがあります。

たとえば、

  • どこまでを今回の対象にするか
  • どのリスクを許容するか
  • どの要件を優先するか
  • 本番へ進めるか
  • 障害時に止めるか続けるか

です。

AIは判断材料を作れますが、プロジェクトの責任そのものを引き受けるわけではありません。

10. 判断演習

あるチームから、

「担当機能の開発とテストは終わりました。完了でよいですか?」

と報告がありました。

あなたなら、

  1. 関係する要件
  2. 関係する他システム
  3. データ
  4. テスト結果
  5. 未解決課題
  6. 運用への引継ぎ

のどこを確認するでしょうか。

「自分の作業が終わった」と「プロジェクトとして完了した」を区別してください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

大規模システム開発では、

部分ではなく、つながりを見る。

これが最初の基本です。

アステリア案件では、これから、要件、設計、連携、AI、テスト、移行、本番障害までを、1つのプロジェクトの中で追っていきます。

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手