Unit 03-01(STAGE 03 の 1 / 7)

誰が最終責任を持つのか

学習状況:未着手

このユニットの結論

大きなプロジェクトの「最終責任」は、プロジェクトの現場の責任者1人がすべてを背負うものではありません。

投資と成果に責任を持つ人(スポンサー)と、計画どおりに進めることに責任を持つ人(プロジェクトの責任者)を分け、それぞれが何を決め、何を上に上げるかをはっきりさせることで、判断が止まらない体制になります。

1. 何の話か

このユニットは、プロジェクトの最終責任の話です。

約120人が関わるプロジェクトでは、毎日たくさんの判断が必要になります。その中には、現場で決めてよい判断と、経営層でなければ決められない判断があります。誰がどの責任を持つかが分からないと、判断が止まったり、決めてはいけない人が決めたりします。

2. なぜ必要か

最終責任があいまいだと、

ということが起きます。

3. このユニットで分かること

4. スポンサーとプロジェクトの責任者

役割 主な責任(一般的な説明) 決めることの例
スポンサー 投資に見合う成果が出ることに、最終的な責任を持つ。プロジェクトを後ろ盾として支える 投資の承認、目的と範囲の大きな変更、予算の追加、プロジェクトを続けるか止めるか
プロジェクトの責任者(プログラムマネージャー、プロジェクトマネージャー) 決められた目的・範囲・予算・期限の中で、プロジェクトを進めることに責任を持つ 計画の立て方、担当の割り当て、範囲の中での優先順位、問題への対応
各分野のリーダー 自分の分野(業務、設計、テスト、移行など)の成果に責任を持つ 分野の中の進め方、分野の成果物の品質

スポンサーは、日々の作業を指示する人ではありません。プロジェクトの責任者が自分では決められない判断を引き受け、必要な人・お金・組織の協力を用意する人です。

5. 「責任を持つ」と「作業をする」は違う

1人が両方を兼ねることもあります。しかし、両方を兼ねていると、作業に追われて判断が後回しになりがちです。判断ごとに「誰が作業し、誰が決めるか」を分ける考え方は、03-03 誰が決め、誰が実行するのかで学びます。

6. 上に上げる(エスカレーション)

プロジェクトの責任者が自分の権限の中で決められないことは、スポンサーなどに上げます。一般的には、次のようなときです。

上げる基準(何を、どの段階で、誰に上げるか)は、プロジェクトの初めに決めておきます(PRG-001)。基準がないと、上げるのが遅れるか、何でも上げて上の人の判断が詰まります。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件に関係する記載

  • 約120人規模のプロジェクト
  • P-001 佐伯 隆志 — CFO/プロジェクトスポンサー
  • P-002 高瀬 真理 — CIO/IT統括責任者
  • P-003 西村 俊介 — プログラムマネージャー
  • P-004 田辺 彩 — PMOリーダー
  • AIは意思決定責任者ではない。投資承認・要件確定・設計承認・セキュリティ例外承認・本番移行承認・Go / No-Go・重大障害判断は、AIへ最終委任しない

正本にあるのは、上の人物の役割の名前です。スポンサーとプログラムマネージャーがそれぞれ何を決めるか、上に上げる基準、会議体(運営委員会など)の有無は、正本に記載がありません。未確定 役職名から、個別の判断を誰が行うかを推測しません。

7. THINK — 範囲を広げてほしいという依頼

プロジェクトの途中で、ある部門の責任者から、プロジェクトの責任者に次の依頼がありました。

「この業務も新しいシステムの対象に入れてほしい。うちの部門の予算から一部を出してもよい。」

プロジェクトの責任者は、良い提案だと思い、その場で引き受けようとしています。

問題

プロジェクトの責任者が、その場で引き受けてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

その場で引き受けるのではなく、判断の場に上げるべき内容です。

確認すること:

  • 範囲の変更は、プロジェクトの責任者の権限の中か(憲章などで決めた範囲か)
  • 予算・期限・ほかの業務の優先順位に、どれだけ影響するか
  • 誰がこの変更を承認する立場か
  • 依頼の内容と、影響の見積もりを、判断する人に示せるか

良い提案であっても、範囲の変更は、プロジェクト全体の約束(目的・範囲・予算・期限)を変える判断です。変更の手続きは 04-06 途中で要件が変わったらどうするのか で学びます。

8. よくある失敗

9. 成果物との接続

PMOの役割は 03-02 PMOとは何をする組織なのか で学びます。

10. AI WORKFLOW — 上げる判断の資料を整える

AIは、判断を上げるときの資料の下書きに役立ちます。

指示例:

「次の依頼について、判断する人に上げる資料の下書きを作ってください。①依頼の内容、②目的・範囲・予算・期限への影響(分かっていることと、まだ分からないことを分ける)、③選べる案、④決めてほしいこと、の順にしてください。どの案がよいかは書かないでください。」

11. REVIEW — AIの下書きを確認する

  • 影響の見積もりに、AIが推測した数値が入っていないか
  • 「決めてほしいこと」が、判断する人に1つずつ伝わる形か
  • AIが、どの案がよいかを書いていないか

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — 権限のしきい値と、節目の関門

権限を数値で区切る

「何を上に上げるか」は、言葉だけでは判断が分かれます。金額・期間・範囲の 3 つで、しきい値を数値にします(教材上の例)。

  • 金額:追加の費用が一定の額までは責任者、超えたらスポンサー
  • 期間:節目の遅れが一定の週数までは責任者、超えたらスポンサー
  • 範囲:範囲の中の順番の入れ替えは責任者、範囲そのものの変更はスポンサー

世界で共有されている考え方では、この表を権限委譲表と呼びます。数値があれば、上げるべきかどうかで迷う時間がなくなり、「上げなかった」ことが責められることもなくなります。

節目に関門を置く

工程の切れ目(要件の確定、設計の承認、テストの終了、稼働の判断)に、「次に進んでよいか」を決める場を置きます。これを「ステージゲート」と呼びます。関門では、進む・止まる・戻るのどれかを、決める権限のある人が決め、記録します。関門が形だけになると、誰も「止まる」と言えず、問題を抱えたまま次の工程に進みます。

運営の場を設計する

スポンサーが判断する場(運営委員会)は、集まる頻度、出る人、決めてよいこと、資料の形を決めておきます。資料は、「決めてほしいこと」を先頭に、選べる案と、それぞれの影響を並べます。報告のための場にしてしまうと、スポンサーの時間が報告で埋まり、判断が後回しになります。

測り方の例

  • しきい値を超えて上がった判断の件数と、上げてから決まるまでの日数
  • 関門で「止まる」「戻る」と決めた回数
  • 運営の場の議題のうち、判断を求めたものの割合

現場で確かめる問い

  • 権限のしきい値は、金額・期間・範囲の数値で決まっているか。どこに書かれているか
  • 工程の切れ目に関門があるか。そこで「止まる」と決めたことはあるか
  • スポンサーが判断する場の議題は、判断を求めるものか、報告が中心か
  • 上げた判断が決まるまでの日数を数えているか

アステリア案件の権限のしきい値、関門の有無、運営の場の設計は、正本に記録がありません。記録なし

12. 人間が判断すること

  • 誰がスポンサーで、誰がプロジェクトの責任者か
  • プロジェクトの責任者の権限と、上に上げる基準
  • 上がってきた判断(範囲・予算・続けるか止めるか など)

投資承認などの重要な判断は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。AIは判断の材料を整えるところまでを手伝います。

13. 判断演習

あなたは、プロジェクトの責任者です。

次の3つのうち、自分で決めてよいものと、スポンサーに上げるべきものを分けてください。分けた理由も書いてください。

  • A:テストの担当の割り当てを変える
  • B:本番稼働の時期を3か月遅らせる
  • C:範囲の中の2つの機能の開発の順番を入れ替える

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

最終責任は、成果に責任を持つスポンサーと、進めることに責任を持つプロジェクトの責任者に分けて考えます。

誰が何を決め、何を上に上げるかを初めに決め、決めたことは記録に残します。

次に読むもの

本文で参照している成果物:PRG-001 プロジェクト憲章、PRG-003 プロジェクト体制図、PRG-004 役割・責任分担表、PRG-007 意思決定記録

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手