Unit 05-08(STAGE 05 の 8 / 8)

データの持ち主をどう決めるか

学習状況:未着手

このユニットの結論

同じデータが 2 つのシステムに別々に入っていると、必ず食い違います。

データごとに「正しい値を持つのはどのシステムか(データ正本)」と「その定義と変更を決めるのはどの業務部門か(持ち主)」を 1 つずつ決め、ほかのシステムは写しとして扱うことが、全体設計の土台です。システムの境目は、データの持ち主の境目と合わせます。

1. 何の話か

このユニットは、データの持ち主を決める考え方の話です。

05-02 どのシステムが何を担当するのか では、システムの担当範囲を学びました。担当範囲を決める軸の 1 つがデータです。顧客の情報を営業管理と新基幹の両方で入力できるようにすると、どちらが正しいか分からなくなります。「正しい値はここにしかない」を決めるのがデータ正本、「その定義を決める業務部門」が持ち主です。

2. なぜ必要か

持ち主を決めないと、

ということが起きます。データの持ち主は、00-06 同じ言葉で違うものを指していないか の「定義の責任者」と同じ人であることが多く、言葉とデータは一緒に決めます。

3. このユニットで分かること

4. データ正本と持ち主

概念 意味 決めること 例(一般的な例)
データ正本 そのデータの正しい値を持つシステム どのシステムで入力・更新し、ほかは写しにするか 顧客の正本は営業管理システム。新基幹は写しを受け取る
持ち主 そのデータの定義と変更を決める業務部門 項目の意味、取りうる値、変更の手続きを誰が決めるか 顧客の持ち主は営業部門。経理が請求先を変えたいときは営業に申請する

正本と持ち主は別の概念です。正本はシステム、持ち主は人(部門)です。両方が決まって初めて、「どこで直し、誰の了解で直すか」が分かります。

5. 持ち主を決める基準と、写しの扱い

持ち主の基準は、一般的には「そのデータが生まれる業務を担う部門」です。顧客は営業で生まれ、社員は人事で生まれ、工数は現場で生まれます。生まれる場所と違う部門を持ち主にすると、入力する人と責任を持つ人が離れ、品質が落ちます。

写しの扱いは、次を決めます。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件のデータ正本に関する記載

  • データ正本:顧客・契約は営業管理システム、社員・組織は人事マスター、工数は勤怠・工数管理SaaS、案件・案件予算・案件原価・請求は新基幹、正式な会計残高・仕訳は FIN-CORE、経営分析は BI
  • 最重要データチェーン:顧客 → 契約 → 案件 → 要員 → 工数 → 原価 → 売上 → 請求 → 会計 → 経営分析
  • 正本からの連携として IF-01 顧客マスター連携(営業管理 → 新基幹)、IF-02 契約情報連携(営業管理 → 新基幹)、IF-03 社員・組織マスター連携(人事 → 新基幹)、IF-04 工数連携(勤怠・工数SaaS → 連携基盤 → 新基幹)がある
  • 成果物に DAT-001 データ一覧・管理責任表、ARC-003 システム責任分担表 がある
  • P-005 藤本 遥 — 経理業務リーダー、P-007 松本 健太 — 営業・契約業務リーダー、P-008 黒田 健 — システムアーキテクト

正本は「どのデータをどのシステムが持つか」を記載していますが、各データの持ち主(業務部門)が誰かは記載がありません。記録なし 写しがずれたときの扱いも記録がありません。記録なし

6. THINK — 「新基幹でも顧客を直せるようにしてほしい」

要件のレビューで、経理部門から次の要望が出ました。

「請求先の住所が間違っていることがよくある。新基幹の画面で直接直せるようにしてほしい。営業に頼むと時間がかかる。」

問題

この要望をそのまま要件にしてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

顧客の正本は営業管理システムです。新基幹で直せるようにすると、2 か所で直せるデータになり、必ず食い違います。

確認すること:

  • 困っているのは「直せないこと」か、「営業に頼むと遅いこと」か(後者なら、申請の手続きを速くする方が筋)
  • 経理が直したい項目は、顧客の項目か、請求のための別の項目か(請求先の宛名が営業の顧客名と違ってよいなら、請求側の項目として新基幹が持つ)
  • 持ち主(営業部門)は、経理が直すことを了解するか。了解するなら、正本側(営業管理)で経理が直せる権限を設計する方法もある
  • 写しで直した値が、次の連携で正本の値に上書きされることを経理は知っているか

要望は正しい困りごとを指しています。答えは「写しで直す」ではなく、「正本で速く直せるようにする」か「請求側の項目として分ける」かです。

7. よくある失敗

8. 成果物との接続

9. AI WORKFLOW — 2 か所で更新できるデータを探させる

AIは、画面の一覧や要件の一覧から、同じデータを複数のシステムで入力・更新できる箇所を探す下書きに役立ちます。

指示例:

「次の画面一覧と要件一覧から、同じデータ(顧客、契約、社員、案件 など)を 2 つ以上のシステムで入力または更新できる箇所を抜き出し、データごとに一覧にしてください。どちらを正本にすべきかの判断や提案はしないでください。」

10. REVIEW — AIの一覧を確認する

  • AIが「同じデータ」と判断したものが、本当に同じ意味のデータか(名前が似た別のデータでないか)
  • 見つかった箇所について、正本と持ち主を人が決めたか
  • 要件一覧を AI に渡してよいか(業務情報の扱い)を事前に確かめたか

11. 人間が判断すること

  • データごとの正本のシステムと、持ち主の業務部門
  • 写しがずれたときに、どちらに合わせるか
  • 写し側の「直したい」要望を、正本の手続きの改善で応えるか、別の項目に分けるか

設計承認は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。

12. 判断演習

あなたの職場で、同じ情報が 2 か所以上に入力されているものを 1 つ挙げてください(例:顧客の連絡先、社員の所属、商品の価格)。

その情報の「生まれる業務」はどこか、正本にすべき場所はどこか、持ち主はどの部門か、もう一方を写しにしたら誰がどう困るか、を書いてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

データは 1 か所で持つ。正本(システム)と持ち主(業務部門)を分けて決め、写しは正本からの連携でしか更新しない。システムの境目は、データの持ち主の境目と合わせる。

次に読むもの

本文で参照している成果物:DAT-001 データ一覧・管理責任表、ARC-003 システム責任分担表

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手