Unit 05-07(STAGE 05 の 7 / 8)

設計判断の記録をどう書くか

学習状況:未着手

このユニットの結論

設計判断の記録は、「何を決めたか」だけ書いても役に立ちません。

そのとき何が分かっていて(文脈)、どんな案があり(選択肢)、なぜその案にし(決定と理由)、何を引き受けたか(影響)、いつ見直すか(条件)。この 5 つを 1 枚に書くことで、半年後の自分と、1 年後に加わる人が、判断をやり直さずに済みます。

1. 何の話か

このユニットは、設計判断の記録の書き方の話です。

05-05 設計判断をなぜ記録するのか では、記録する理由を学びました。ここでは、実際にどう書くか、どれだけ書くか、いつ書くかを扱います。世界で共有されている考え方では、この形式を ADR(アーキテクチャ決定記録)と呼びます。

2. なぜ必要か

書き方が決まっていないと、

ということが起きます。型があれば、書く側も読む側も迷いません。

3. このユニットで分かること

4. 5 つの要素

要素 書くこと 悪い例(一般的な例) 良い例(一般的な例)
文脈 判断が必要になった状況。制約、分かっていたこと、分かっていなかったこと 「連携方式を決める必要があった」 「夜間に 40 万件を翌朝 6 時までに取り込む必要がある。相手システムは夜間停止があり、同期では待ち時間が読めない」
選択肢 検討した案(2 つ以上)と、それぞれの利点・欠点 「A 案を採用」 「A 同期、B 非同期(基盤経由)、C ファイル受け渡し。A は実装が簡単だが相手の停止で止まる…」
決定 選んだ案と、選んだ理由(なぜほかを選ばなかったか) 「B 案」 「B。相手の停止に影響されず、再試行を基盤に任せられるため。C は件数の増加に弱い」
影響 この決定で引き受けること。新しい制約、費用、将来の見直しのしにくさ 書かれていない 「基盤の運用が必要。取り込みの遅れは翌朝まで分からないため、監視を追加する」
見直しの条件 どうなったらこの判断を見直すか 書かれていない 「相手システムが夜間停止をやめたとき。件数が 100 万件を超えたとき」

記録には、決定した日、決めた人、承認した人、状態(提案中・採用・廃止・置き換え済み)を添えます。

5. 何を記録し、どう保つか

すべての判断を記録する必要はありません。 記録するのは、あとで「なぜこうなっているのか」と問われそうな判断です。目安は、戻すのに費用がかかる判断、複数の会社やシステムに影響する判断、要件や制約の解釈を含む判断です。

記録は書き換えません。 判断を変えるときは、新しい記録を作り、古い記録の状態を「置き換え済み」にして新しい記録を指します。こうすると、判断の歴史が残り、「以前なぜそうしたか」が消えません。

記録は探せる場所に置きます。 設計書の中ではなく、番号を振った一覧(ARC-006 設計判断記録)として持ち、全体構成の説明(ARC-002 目標システム構成説明書)から番号で参照します。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件の設計判断に関する記載

  • システムは 11。連携の経路には SYS-06 システム連携基盤を通るもの(IF-04 工数連携、IF-05 売上仕訳連携、IF-07 原価仕訳連携 など)と、直接つなぐもの(IF-01 顧客マスター連携、IF-03 社員・組織マスター連携 など)がある
  • 成果物に ARC-006 設計判断記録、ARC-002 目標システム構成説明書 がある
  • P-008 黒田 健 — システムアーキテクト
  • 設計承認は、AIへ最終委任しない事項

なぜ基盤を通す連携と直接つなぐ連携があるのか、その判断がどう記録されたかは、正本に記録がありません。記録なし 上の表の例はいずれも教材上の例です。

6. THINK — 「決定だけ書けば十分」

設計のレビューで、アーキテクトが次のように言いました。

「設計判断記録は、決めたことを一行で書けば十分です。理由を書く時間があるなら設計を進めたい。」

問題

この進め方の問題は何でしょうか。

判断例を開く

判断

決定だけの記録は、半年後に「なぜ」と問われたとき、判断をやり直すことになります。

確認すること:

  • 文脈(当時の制約と分かっていなかったこと)が書かれていないと、状況が変わったかどうか判断できない
  • 選択肢が書かれていないと、「B 案は検討したのか」と同じ議論が繰り返される
  • 影響が書かれていないと、引き受けたはずの制約を誰も知らず、あとで驚く
  • 見直しの条件が書かれていないと、見直す機会を逃す

5 つの要素は長文である必要はありません。1 件につき 1 ページ、15 分で書ける量が目安です。その 15 分は、半年後の数時間の議論を省きます。

7. よくある失敗

8. 成果物との接続

9. AI WORKFLOW — 記録の抜けている要素を点検させる

AIは、設計判断記録の各件について、5 つの要素がそろっているかを点検する下書きに役立ちます。

指示例:

「次の設計判断記録について、1 件ごとに『文脈』『選択肢(2 つ以上)』『決定と理由』『影響』『見直しの条件』が書かれているかを表にし、欠けている要素を示してください。欠けている要素の中身を推測して補ったり、判断の良し悪しを評価したりしないでください。」

10. REVIEW — AIの点検を確認する

  • AIが「書かれている」とした要素が、形だけでなく中身を持っているか(「理由:妥当なため」は理由ではない)
  • 欠けている要素を、当時の判断に関わった人に確かめて埋めたか
  • 設計判断記録を AI に渡してよいか(設計情報の扱い)を事前に確かめたか

11. 人間が判断すること

  • どの判断を記録の対象にするか
  • 選択肢のどれを選ぶか、何を引き受けるか
  • 見直しの条件が来たとき、判断を変えるか

設計承認は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。

12. 判断演習

あなたが最近した「あとで理由を聞かれそうな判断」を 1 つ選んでください(仕事でも私生活でもかまいません)。

文脈・選択肢(2 つ以上)・決定と理由・影響・見直しの条件の 5 つを、それぞれ 2〜3 行で書いてください。書いてみて、当時は意識していなかった「引き受けたこと」があれば、それも書いてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

記録は 5 つの要素で 1 枚。文脈・選択肢・決定と理由・影響・見直しの条件。書き換えず、番号で参照し、問われそうな判断だけを残す。

次に読むもの

本文で参照している成果物:ARC-006 設計判断記録、ARC-002 目標システム構成説明書

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手