このユニットの結論
設計の結果(どう作ったか)は、設計書や構成図に残ります。しかし、「なぜそう決めたのか。ほかにどんな案があり、なぜ選ばなかったのか」は、記録しなければ消えてしまいます。
判断の理由を残しておくことで、あとから変更するとき、問題が起きたとき、人が入れ替わったときに、正しく判断し直せます。
1. 何の話か
このユニットは、設計判断の記録の話です。
設計の途中では、「このデータはどこに置くか」「この連携は、すぐ送るか、まとめて送るか」「この部分は既製品を使うか、作るか」など、たくさんの判断をします。その判断には、そのときの前提や制約があります。
2. なぜ必要か
判断の理由を残さないと、
- 数か月後に「なぜこうなっているのか」を誰も説明できない
- 前提が変わったのに、見直すべき判断がどれか分からない
- 同じ議論を何度も繰り返す
- 新しく入った人が、理由を知らずに設計を変え、前に避けた問題を再び招く
ということが起きます。
3. このユニットで分かること
- 設計判断の記録に書くこと
- どの判断を記録すべきか
- 記録を使う場面
- 記録の作成で、AIに任せてよいことと人間が決めること
4. 記録に書くこと
一般的には、1つの判断について次を書きます(ARC-006 設計判断記録)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決めること | 何を決める必要があったか |
| 前提と制約 | そのときに分かっていたこと、守る必要があったこと |
| 比べた案 | 選ばなかった案も含めて、それぞれの長所・短所 |
| 決めたこと | 選んだ案 |
| 理由と、受け入れた弱み | なぜその案か。その案の弱みをどう扱うか |
| 決めた人・日付 | 誰がいつ決めたか |
| 見直しの条件 | どうなったら判断を見直すか |
5. どの判断を記録するか
すべての判断を記録すると、量が多すぎて読まれなくなります。一般的には、次のような判断を記録します。
- あとから変えるのが難しい判断(システムの分け方、データの置き場所など。05-03)
- 複数のシステム・会社に影響する判断(連携の方式、責任の境目など)
- 費用や非機能(速さ・止めてよい時間など)に大きく影響する判断
- 意見が分かれた判断
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- P-008 黒田 健 — システムアーキテクト
- システム 11、約36本のシステム連携
- 成果物に ARC-006 設計判断記録、PRG-007 意思決定記録がある
- 設計承認は、AIへ最終委任しない事項の1つ
アステリア案件の設計判断の中身(何を、なぜ決めたか)は、正本に記載がありません。未確定
6. THINK — 「設計書があれば十分」
(教材上の例)設計の担当者が、次のように言いました。
「設計書に、どう作るかは全部書いてあります。判断の理由まで別に記録するのは手間なので、省きましょう。」
問題
この考えでよいでしょうか。
判断例を開く
判断
設計書だけでは足りない場面があります。
確認すること:
- 設計書から、「なぜほかの案を選ばなかったのか」が読み取れるか
- 前提が変わったとき(利用の量が増えた、担当の会社が変わった など)、どの設計を見直せばよいかが分かるか
- 担当者がいなくなったとき、理由を説明できる人がいるか
すべてを記録する必要はありませんが、あとから変えるのが難しい判断や、意見が分かれた判断は、理由を残しておくと、後の判断が速く、正しくなります。
7. よくある失敗
- 決めたことだけを書き、比べた案と理由を書かない
- 判断が終わってから時間がたって書き、理由を思い出せない
- 記録の置き場所が決まっておらず、探せない
- 判断を変えたときに、古い記録を消してしまう(変えた記録を足す)
8. 成果物との接続
- ARC-006 設計判断記録:設計の判断を、理由と比べた案とともに残す
- PRG-007 意思決定記録:設計以外のプロジェクトの判断を残す
- ARC-001 システム全体構成図:判断の結果としての全体像
9. AI WORKFLOW — 議論の記録から判断を取り出させる
AIは、設計の議論のメモから、判断の記録の下書きを作るのに役立ちます。
指示例:
「次の設計の打ち合わせのメモから、判断を1件ずつ取り出し、決めること・前提・比べた案・決めたこと・理由の欄に分けてください。メモに書かれていない欄は空欄にし、理由を推測で補わないでください。」
10. REVIEW — AIの下書きを確認する
- 下書きが、元のメモと合っているか
- AIが、理由や比べた案を一般論で補っていないか
- 決めた人に、内容を確かめてもらったか
11. 人間が判断すること
- どの判断を記録するか
- 設計の判断そのもの(どの案を選ぶか)
- 判断を見直すか
設計承認は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。
12. 判断演習
あなたは、半年前の設計の判断を見直す担当になりました。記録には「決めたこと」しか書かれていません。
判断を見直すために、当時の担当者に確かめたいことを3つ挙げてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
設計判断の記録は、なぜそう決めたか、ほかにどんな案があったかを残すものです。
あとから変えるのが難しい判断や、意見が分かれた判断ほど、理由を残します。