このユニットの結論
障害の再発防止は、振り返りの報告書を書き終えたところでは終わりません。
人を責めずに「なぜ起きたか・なぜ早く気づけなかったか」を掘り下げ、仕組みで防ぐ対策を選び、実施されて効いたことを確かめ、同じ弱点を持つほかの場所にも広げるところまでが再発防止です。「注意を徹底する」だけでは、同じ障害はまた起きます。
1. 何の話か
障害が落ち着き、業務も元に戻りました。関係者はほっとして、それぞれの仕事に戻っていきます。
数か月後、よく似た障害がまた起きました。前回の振り返りで決めた対策は、担当も期限もあいまいなまま、手付かずでした。
このユニットは、そうならないための再発防止の話です。障害が起きたときの動き方は 13-01〜13-04 で学びました。ここでは、障害が落ち着いたあとに何をするかを考えます。
2. なぜ必要か
再発防止が形だけになると、
- 同じ種類の障害を繰り返し、そのたびに業務が止まる
- 対策が決まっても実施されず、実施されても効いたかどうか誰も確かめない
- 同じ弱点が別のシステムや別の処理にも残っていて、形を変えて障害が起きる
ということが起きます。
3. このユニットで分かること
- 人を責めない振り返りの進め方
- 再発防止策の種類と、効きやすさの違い
- 対策が効いたかの確かめ方
- 同じ弱点をほかの場所で探す(横に広げる)考え方
4. 振り返りの進め方
振り返りは、障害報告書(OPS-005)に残した事実をもとに、復旧のあと、記憶と記録が新しいうちに行います。一般的には、次の問いを順に考えます。
- なぜ起きたか:証拠で確かめた原因と、その背景
- なぜ早く気づけなかったか:監視や確認のどこに抜けがあったか
- なぜ影響が大きくなったか:影響を小さく抑える手段はなかったか
- うまくいったことは何か:次も続けたいこと
- 何を変えるか:対策と、担当・期限
大切なのは、「担当者が間違えた」で止めないことです。「なぜ間違えられる状態だったのか」「なぜ間違えても止まらなかったのか」と、人ではなく仕組みに向けて問いを続けます。人を責めない振り返りは、英語で「ブレームレス(blameless)」と呼ばれることがあります。
5. 再発防止策の種類
対策にはいくつかの種類があり、効きやすさが違います。一般的には、上の行ほど人の注意に頼らずに済みます。
| 種類 | 考え方 | 例(教材上の例) |
|---|---|---|
| 起きないようにする | 誤りそのものが起きない作りにする | 入力の値をシステムで確かめる。手作業を自動にする |
| 早く気づく | 起きても、すぐに分かるようにする | 監視を足す(OPS-002) |
| 広がりを抑える | 起きても、影響を小さく止める | 処理を途中で止められるようにする |
| 手順と訓練 | 人が正しく動けるようにする | 手順書を直す(OPS-003)。訓練する |
| 確かめを増やす | 本番に出る前に見つける | テストや確認の観点を足す |
| 注意を呼びかける | 気をつけるよう伝える | 周知のメール |
「注意を呼びかける」だけの対策は、ほとんど効きません。ほかの種類と組み合わせます。
6. 対策が効いたかを確かめる
対策には、2段階の確かめがあります。
- 実施されたか:決めた期限までに、決めたとおりに行われたか
- 効いたか:同じ種類の障害や、その前ぶれが減ったか。足した監視が実際に知らせるか、訓練で試したか
確かめる時期と方法は、対策を決めるときに一緒に決めます。対策は課題として一覧で管理し(PRG-006 課題・リスク管理表)、閉じる前に「効いたか」を確かめます。
7. 横に広げる
障害の原因となった弱点は、ほかの場所にもあることがあります。同じ手順書のひな形を使っている処理、同じ設定の仕方をしている仕組みなどです。
振り返りでは、「ここ以外に、同じ弱点を持つところはないか」を問い、探す範囲と担当を決めます。これを「横展開」と呼ぶことがあります。
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
アステリア案件に関係する記載
- M18 本番稼働、M21 初期安定化完了
- システムに SYS-11 監視・ログ基盤がある
- P-011 山下 恵 — 本番移行・運用リーダー
- 成果物に OPS-006 障害振り返り報告書がある
- AIへ最終委任しないことに「重大障害判断」がある
アステリア案件の本番の障害の振り返りの内容、決めた再発防止策、振り返りを誰が進めるかは、正本に記載がありません。未確定
8. THINK — 「今後は注意を徹底します」
(教材上の例)ある夜間処理で、担当者が手順を1つ飛ばしたため、翌朝の業務の開始が遅れました。振り返り報告書の下書きには、次のように書かれています。
「原因:担当者が手順を1つ飛ばした。対策:今後は注意を徹底する。」
問題
この下書きで、再発防止になるでしょうか。
判断例を開く
判断
なりません。問いが「人」で止まっています。
確認すること:
- なぜ手順を飛ばせたのか(手順書が分かりにくい、確認の欄がない、など)
- 飛ばしたことに、なぜその場で気づけなかったのか
- 手順を自動にしたり、飛ばすと先へ進めない作りにしたりできないか
- 同じ書き方の手順書が、ほかの処理にもないか
- 対策の担当・期限と、効いたかを確かめる時期
担当者を責めても、次の担当者が同じところでつまずきます。
9. よくある失敗
- 原因を「人の不注意」で終え、対策が「注意の徹底」だけになる
- 対策に担当と期限がなく、いつの間にか消える
- 対策を実施したことを確かめて閉じ、効いたかを確かめない
- 障害が起きた場所だけを直し、同じ弱点を持つほかの場所を探さない
- 振り返りで誰かを責め、失敗が報告されなくなる
10. 成果物との接続
- OPS-006 障害振り返り報告書:原因・検知・対策と、対策の確認を残す
- OPS-005 障害報告書:振り返りのもとになる事実と時系列
- OPS-002 監視・アラート一覧:「早く気づく」対策を反映する
- OPS-003 運用手順書:「手順と訓練」の対策を反映する
- PRG-006 課題・リスク管理表:対策を課題として、閉じるまで管理する
11. AI WORKFLOW — 過去の振り返りを横断して読ませる
AIは、たくさんの振り返り報告書を読み比べ、繰り返しを見つける下書きに役立ちます。
指示例:
「次の振り返り報告書を読み、①対策が注意の呼びかけだけのもの、②担当または期限のない対策、③効いたかの確認が空欄の対策、④似た原因が書かれている報告書の組、を挙げてください。原因を新しく推定したり、対策を決めたりしないでください。」
12. REVIEW — AIの読み比べを確認する
- AIが「似ている」とした組を、人が元の報告書で確かめたか
- AIの要約で、確かめきれていない原因が確定したように書かれていないか
13. 人間が判断すること
- 原因を確定したと判断するか
- どの対策を採用し、誰に、いつまでに任せるか
- 対策が効いたと判断して閉じるか
- 同じ弱点を、どの範囲まで探すか
14. 判断演習
(教材上の例)振り返りで、次の3つの対策が決まりました。
- 夜間処理の終了を知らせる監視を足す
- 手順書に確認の欄を足す
- 同じ手順書のひな形を使っているほかの処理を点検する
それぞれについて、「実施されたか」と「効いたか」を、いつ、何で確かめるかを書いてください。
あなたの記録あなたの考え。事実ではありません
判断ノート
このユニットで覚えてほしいこと
再発防止は、仕組みで防ぐ対策を選び、効いたことを確かめ、同じ弱点をほかでも探すところまでです。
問いを「人」で止めず、「なぜその状態だったのか」まで続けます。