これは何か
セキュリティ評価報告書は、システムの安全性を決めた範囲と方法で調べ、見つかった弱点(脆弱性)と、その対応の状況を、判断する人に報告する成果物です。
脆弱性とは、悪用されると情報の漏えいや改ざん、システムの停止などにつながる弱点のことです。報告書は「安全です」と宣言する文書ではありません。何を調べ、何を調べていないかをはっきりさせたうえで、見つかったことを示します。
なぜ作るか
- 判断する人が、見つかった弱点と対応の状況を1か所で確かめられる
- 調べた範囲と調べていない範囲を分け、「調べていないのに安全と思い込む」ことを防ぐ
- 直さずに残す弱点がある場合、その理由と受け入れた人を記録に残す
- 次の評価で、前回からの変化を確かめられる
誰が使うか・いつ作るか
- 作る人:評価を行う担当(社内のセキュリティの担当、または外部の評価の専門家)
- 読む人:セキュリティの責任者、システムの担当、稼働の判断に関わる人
- 一般的には、評価の時期と範囲をプロジェクトの計画で決め、評価のたびに作ります。いつ・何回行うかは、プロジェクトごとに決めます
- アステリア案件の評価の範囲・方法・時期・結果は、正本に記載がありません。未確定
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
評価に関係する記載
- P-012 石井 稔 — セキュリティ責任者
- システムに SYS-08 認証・ID基盤、SYS-11 監視・ログ基盤がある
- M18 本番稼働
- AIへ最終委任しないことに「セキュリティ例外承認」「Go / No-Go」がある
アステリア案件で、誰がどの範囲を評価し、何が見つかり、どう扱われたかは、正本に記載がありません。未確定 危機演習で扱う出来事は、危機演習の中で扱います。
主な項目
一般的には、次の項目で構成します。
- 目的と範囲:何のために、どのシステム・機能・環境を調べたか。調べていないものも書く
- 方法:どのような調べ方をしたか(設計の確認、設定の確認、専門のツールによる検査、専門家による疑似的な攻撃の試験など)
- 時期と版:いつ、どの版のシステムを調べたか
- 見つかったことの一覧:弱点ごとに、内容・場所・重大度・再現の手順・対応の案
- 重大度の基準:重大度を何で決めたか
- 対応の状況:直した、直す予定、直さずに受け入れる、の区別と期限
- 残るリスク:直さずに残す弱点と、その理由・受け入れた人
- 評価者と日付
教材用サンプル成果物の読み方を学ぶための例
教材用サンプル — 見つかったことの一覧
この成果物は学習用サンプルです。FROZEN正本に記載されたCASE FACTと、成果物の読み方を学ぶための教材用サンプル値を区別して表示しています。
次の表は、報告書の一覧の書き方を学ぶための例です。内容・重大度・状態は、すべて教材上の架空の例で、アステリア案件の評価結果ではありません。危機演習の出来事を表すものでもありません。
| No. | 内容 | 場所 | 重大度 | 状態 | 期限・担当 |
|---|---|---|---|---|---|
| SEC-EX-01 | パスワードの再設定の画面で、登録されているかどうかが分かる表示になっている | 利用者向け画面 | 中 | 修正済み(再確認済み) | ― |
| SEC-EX-02 | 使われていない管理用の機能が有効なまま | 管理機能 | 高 | 修正中 | 期限と担当を記入 |
| SEC-EX-03 | 画面の操作の記録に、一部の項目が残っていない | 操作の記録 | 中 | 対応の方針を検討中 | 期限と担当を記入 |
| SEC-EX-04 | 古い版の部品を使っている(既知の弱点は該当しない設定) | 外部から取り入れた部品 | 低 | 受け入れの判断待ち | 判断者を記入 |
| 区分 | 例(教材上の例) |
|---|---|
| 調べた範囲 | 利用者向けの画面、管理機能、ログインの仕組み |
| 調べていない範囲 | 他の会社のシステムとの連携の部分(別の評価で扱う予定) |
| 条件 | テスト用の環境で、稼働前の版を調べた |
読み方
- まず「調べていない範囲」を読む。そこは安全とも危険とも言えない
- 調べた時期と版が、今のシステムと同じか(その後に変わった部分はないか)
- 重大度の高いものから、状態と期限を見る
- 「修正済み」に、直ったことを再び確かめた記録があるか
- 直さずに受け入れるものに、理由と受け入れた人が書かれているか
書き方
- 評価の前に、目的・範囲・方法・重大度の基準を決め、関係者と合意する
- 評価を行い、見つかったことを1件ずつ、再現の手順とともに記録する
- 重大度を、決めた基準で付ける(感覚で付けない)
- システムの担当と、対応の案・期限を決める
- 直したものは、もう一度確かめてから「修正済み」にする
- 残るものは、受け入れるかどうかを判断する人に上げる
何を書いてはいけないか
- 範囲を書かずに「問題なし」とだけ書く
- 直ったことを確かめていないのに「修正済み」とする
- 弱点を悪用する具体的な手順を、多くの人が見られる場所に書く(報告書の扱いを限定する)
どこを見るか
- 範囲と、範囲の外
- 調べた時期・版と、今のシステムとの違い
- 重大度の基準
- 重大度の高いものの状態と期限
- 受け入れる弱点の理由と、受け入れた人
赤信号
- 「問題はありませんでした」だけで、範囲と方法が書かれていない
- 見つかったことに、担当と期限がない
- 「修正済み」だが、再確認の記録がない
- 受け入れる弱点の欄に、受け入れた人がいない
よくある失敗
- 見つかったことを、直す担当のチームに具体的に伝えない
- 報告書を受け取っただけで、対応の進み具合を追いかけない
- 重大度の低いものを放置し続け、組み合わさって大きな弱点になる
関係するUnit・成果物・危機演習
- Unit:08-01 ログインできれば安全なのか、10-05 障害の重大度をどう決めるのか、10-06 テストをいつ終了してよいのか、12-05 誰が本番稼働を決めるのか
- 成果物:SEC-001 セキュリティ基本方針、SEC-002 権限設計表、CUT-005 本番稼働判定資料、PRG-006 課題・リスク管理表
- 危機演習:CR10 重大な脆弱性が発見される(学習上の接続です。正式な対応関係ではありません)
AI WORKFLOW
AIは、報告書の一覧を整理し、抜けを探す下書きに役立ちます。
「この評価報告書の一覧について、①担当または期限がないもの、②『修正済み』で再確認の記録がないもの、③受け入れの判断者がないもの、を挙げてください。重大度を付け直したり、対応の要否を判断したりしないでください。」
REVIEW
- AIが挙げた項目が、報告書の元の内容と合っているか
- AIが重大度や対応の要否を決めていないか
- 弱点の詳しい内容を AI に渡してよいか(情報の扱い)を、事前に確かめたか
人間が判断すること
- 重大度の基準と、個々の重大度
- 弱点を直すか、受け入れるか。受け入れる場合の条件と期間
- 残る弱点がある状態で、次の工程や本番に進むか
セキュリティ例外承認と Go / No-Go は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。
いつ使うか
この教材では STAGE 08|誰に何を許可するのか の文脈で扱います。 アステリア案件での正式な作成・使用時期(月)は正本に記載がないため、未確定としています。
最後の問い
この報告書を読んだ判断者は、「何を、どこまで調べ、何が見つかり、何が残っているのか」を説明できますか?