これは何か
データ定義書は、新しいシステムで扱うデータの項目1つずつについて、「何を表すか・どんな形で入るか・どんな値を取りうるか・誰が決めたか」を定める成果物です。
同じ項目を、画面を作る人、ほかのシステムとの連携を作る人、帳票を作る人、業務でその値を読む人が、それぞれ別の思い込みで扱うと、どこかで値の食い違いが起きます。定義書は、その全員が見る「項目の辞書」です。
なぜ作るか
- 画面・連携・帳票・分析で、同じ項目を同じ意味・同じ形で扱う
- 入力のチェック(桁・必須・取りうる値)の根拠をはっきりさせる
- データ移行で、移行先の項目の条件を示す(DAT-004 データ移行対応表 の移行先の側)
誰が使うか・いつ作るか
- 作る人:データの設計の担当。業務の意味の欄は、業務の担当と一緒に書く
- 確かめる人:その項目を業務で使う担当、連携の相手のシステムの担当
- 使う人:画面・連携・帳票・移行を作る人、テストの担当
- 一般的には、要件がまとまり全体の設計が進んだ段階で作り始め、設計・開発の中で詳しくし、変更のたびに更新します
- 誰が定義を決め、誰が承認するかは、プロジェクトによって異なります
CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実
データ定義に関係する記載
- システムに SYS-01 新基幹システムがある。データの正本では、案件・案件予算・案件原価が新基幹
- 社員・組織のデータの正本は人事マスター。IF-03 社員・組織マスター連携:人事 → 新基幹
- 10年分のデータ移行
アステリア案件のデータ定義書の中身(項目・形式・取りうる値)と、定義を決めた人・承認した人は、正本に記載がありません。未確定
主な項目(列)
1つの項目について、一般的には次を書きます。
- 項目の名前:画面や帳票に出る名前と、システムの中の名前
- 意味:業務の言葉で、この項目が何を表すか。名前の言い換えではなく、業務の担当が読んで「そういうことか」と分かる説明
- 形式:文字・数字・日付など。日付なら何時点の日付か
- 桁:文字数・数字の桁数・小数の扱い
- 必須かどうか:空を許すか。許すなら、空は何を意味するか
- 取りうる値:決まった値だけを取るなら、その一覧(コード表)と、それぞれの意味
- 単位:時間なら「時間」か「分」か、数量なら何を数えるか
- 持ち主:その定義を決め、変えるときに判断する人(役割)。データの種類ごとの責任者は DAT-001 とそろえる
- 使われている場所:どの画面・連携・帳票で使うか
- 変更の履歴:いつ、誰が、何を、なぜ変えたか
教材用サンプル成果物の読み方を学ぶための例
教材用サンプル — 定義の数行
この成果物は学習用サンプルです。FROZEN正本に記載されたCASE FACTと、成果物の読み方を学ぶための教材用サンプル値を区別して表示しています。
内容はすべて教材上の架空の例で、アステリア案件の記録ではありません。
| No. | 項目 | 意味 | 形式・桁 | 必須 | 取りうる値 | 持ち主 | 最後の変更 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| DD-EX-01 | 案件コード | 案件を1つに特定する番号。一度付けたら変えない | 英数字 10桁 | 必須 | 付け方の決まりは別紙 | 業務の管理部門 | 初版 |
| DD-EX-02 | 案件ステータス | 案件が今どの段階にあるか | 数字 2桁 | 必須 | 10 準備中/20 進行中/30 中断/40 終了 | 業務の管理部門 | 「30 中断」を追加(理由と承認者を記入) |
| DD-EX-03 | 作業日 | 作業を行った日(入力した日ではない) | 日付 | 必須 | 未来の日付は不可 | 勤務管理の担当部門 | 初版 |
| DD-EX-04 | 作業時間 | その日にその案件で作業した時間 | 数字 小数1桁 | 必須 | 0.0〜24.0。単位は「時間」 | 勤務管理の担当部門 | 単位を「分」から「時間」に変更(連携の相手にも連絡済み) |
| DD-EX-05 | 備考 | 自由に書く欄 | 文字 200字 | 任意 | ― | 未決 | 初版 |
DD-EX-05 は持ち主が「未決」です。自由に書く欄は、ほかの情報の置き場として使われやすいため、何を書いてよい欄かを持ち主が決めるまで確定にしません。
読み方
- 「意味」が、名前の言い換えで終わっていないか(「案件コード:案件のコード」では意味にならない)
- 日付・時間・数量に、何時点か・どの単位かが書かれているか
- 取りうる値が一覧になり、それぞれの意味が書かれているか
- 必須でない項目で、空が何を意味するかが書かれているか
- 持ち主と、最後の変更の理由が書かれているか
書き方
- 要件と業務の流れから、必要な項目を洗い出す
- 業務の担当と一緒に、項目ごとの意味を業務の言葉で書く
- 形式・桁・必須・取りうる値・単位を決める
- 持ち主を決め、DAT-001 の責任者と食い違わないかを確かめる
- 使われている場所(画面・連携・帳票)を書き、連携の相手の担当にも確かめてもらう
- 変えるときは、変更の履歴に理由と承認者を残し、使われている場所の担当に知らせる
何を書いてはいけないか
- 確かめていない意味を、名前から推測して書くこと
- 取りうる値に「その他」だけを置き、何が入るか分からないままにすること
- 変更の履歴を残さずに、定義を上書きすること
ほかの成果物との違い
- DAT-001 データ一覧・管理責任表:データの種類ごとに、正本と責任者を決める。定義書はその中の項目ごとの意味と形を決める
- DAT-004 データ移行対応表:古い項目を新しい項目にどう入れるか。定義書は、その「新しい項目」の側の決まり(対応づけの考え方は 11-03 のテーマです)
- ARC-004 システム連携一覧:どのシステムからどのシステムへ何を渡すか。受け渡す項目の意味と形は、定義書とそろえる
どこを見るか
- 意味の欄が、業務の言葉で書かれているか
- 形式・桁・単位・必須
- 取りうる値の一覧と、それぞれの意味
- 持ち主
- 変更の履歴と、使われている場所への連絡
赤信号
- 意味の欄が空、または名前の言い換えだけになっている
- 時間や数量の項目に単位が書かれていない
- 取りうる値が、画面の作りの中にだけあり、定義書にない
- 定義書と、実際の画面の入力チェックが食い違っている
よくある失敗
- システムの中の名前と形式だけを書き、業務の担当が読めない定義書になる
- 開発の途中で定義を変えたが、定義書を直さず、画面と連携で扱いがずれる
関係するUnit・成果物・危機演習
- Unit:11-03 古い項目と新しい項目を対応させる、05-02 どのシステムが何を担当するのか
- 成果物:DAT-001 データ一覧・管理責任表、DAT-004 データ移行対応表、DAT-005 データ品質・クレンジング一覧、ARC-004 システム連携一覧
- 危機演習:この成果物を直接の題材にする危機演習はありません
AI WORKFLOW
AIは、定義書の書き漏れを探す下書きに役立ちます。
「次のデータ定義書を読み、①意味の欄が空か、項目の名前を言い換えただけの行、②日付・時間・数量なのに、時点や単位が書かれていない行、③必須でないのに、空の意味が書かれていない行、④持ち主が空欄の行、を挙げてください。意味や取りうる値を推測して埋めないでください。」
REVIEW
- AIが挙げた行を、人が定義書の原本で確かめたか
- AIが意味の欄を、一般的な説明で書き足していないか
人間が判断すること
- 項目の意味と、取りうる値の確定
- 定義の持ち主
- 定義を変えるか。変える場合に、使われている場所へどう知らせるか
いつ使うか
この教材では STAGE 05|全体設計を作る の文脈で扱います。 アステリア案件での正式な作成・使用時期(月)は正本に記載がないため、未確定としています。
最後の問い
この定義書の1行を読んだ人は、画面を作る人も、連携を作る人も、業務の担当も、同じ値を同じ意味で受け取れますか?