Unit 10-07(STAGE 10 の 7 / 8)

テストデータをどう管理するか

学習状況:未着手

このユニットの結論

テストの結果は、テストデータの質で決まります。

本番のデータをそのまま使えば安全の問題になり、適当に作ったデータでは本番の問題が見つかりません。目的ごとにデータの作り方を決め、個人情報は作り変え、本番相当の量と偏りを持たせ、誰がどのデータをいつ使ったかを管理する。それがテストデータの管理です。

1. 何の話か

このユニットは、テストに使うデータをどう用意し、どう扱うかの話です。

10-02 小さい単位から全体へテストする で学んだ各段階のテストは、どれもデータを必要とします。部品のテストには少量の決まったデータ、つなげたテストには複数システムで整合したデータ、性能のテストには本番相当の量のデータ。目的が違えば、必要なデータも違います。

2. なぜ必要か

テストデータを管理しないと、

ということが起きます。

3. このユニットで分かること

4. 目的ごとのデータ

目的 必要なデータ 作り方(一般的な例) 注意
部品のテスト 少量で、結果が決まっているデータ 手で作る。境目の値(0、上限、空、異常な形)を含める 本番の複製は不要
つなげたテスト 複数のシステムで整合したデータ 業務の流れ(顧客 → 契約 → 案件 → 工数 → 請求)に沿って一式作る システムごとにばらばらに作ると整合しない
利用者の受入テスト 業務部門が自分の業務として確かめられるデータ 本番を作り変えたもの。業務部門が読める内容 個人情報の作り変えが必須
性能のテスト 本番相当の量と偏り 本番を作り変えて複製するか、本番の分布に合わせて生成する 量だけでなく偏り(特定の顧客に件数が集中 など)を再現する
移行のリハーサル 本番の全量 本番から移行の処理で作る 環境と権限を本番と同じ厳しさで扱う

5. 作り変えと、整合と、版

本番データの作り変え(マスキング)は、個人を特定できる項目(氏名、住所、連絡先、口座)を、形を保ったまま別の値に置き換えることです。形を保つ(桁数、文字の種類、存在する郵便番号)ことで、テストとしての価値を残します。作り変えの規則は文書にし、作り変える前のデータに触れる人を限ります。

整合は、複数のシステムにまたがるテストデータを一式として作ることです。顧客がいて、契約があり、案件があり、工数が付き、請求がある。この一式を「テストデータの組」として番号を付け、どのテストがどの組を使うかを TST-002 テスト計画・対象一覧 に書きます。

版は、テストデータを環境ごとに固定し、テストの前に決まった状態に戻せるようにすることです。どの環境にどの版のデータが入っているかは DEV-004 環境・リリース対応表 と合わせて管理します。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件のデータとテストに関する記載

  • 10年分のデータ移行。最重要データチェーン:顧客 → 契約 → 案件 → 要員 → 工数 → 原価 → 売上 → 請求 → 会計 → 経営分析
  • データ正本:顧客・契約は営業管理システム、社員・組織は人事マスター、工数は勤怠・工数管理SaaS
  • 成果物に TST-002 テスト計画・対象一覧、DEV-004 環境・リリース対応表、SEC-003 本番特権アクセス管理表 がある
  • P-010 宮田 直人 — テスト・品質管理リーダー、P-012 石井 稔 — セキュリティ責任者

アステリア案件でテストデータがどう作られ、本番データがどう作り変えられ、誰が扱えたかは、正本に記録がありません。記録なし

6. THINK — 「本番のデータをコピーすれば早い」

テスト環境の準備で、ある担当者が次のように提案しました。

「本番のデータベースをそのままテスト環境にコピーしましょう。一番早いし、本番と同じデータでテストできます。」

問題

この提案をそのまま認めてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

「本番と同じデータ」は、テストには良くても、安全には最悪です。

確認すること:

  • テスト環境を見られる人(開発者、ベンダー、外部の作業者)は、本番の個人情報を見てよい人か
  • 個人情報の項目を、形を保ったまま作り変える規則と仕組みがあるか
  • 作り変える前のデータに触れる人と手順が、本番と同じ厳しさで管理されるか
  • テスト環境の守りは本番と同じか(多くの場合、テスト環境の方が緩い)
  • 本番のデータに、取引先との契約で複製を禁じられているものはないか

早さのために作り変えを省くと、テスト環境が「守りの緩い本番」になります。作り変えの仕組みを先に作ることが、結局は早道です。

7. よくある失敗

8. 成果物との接続

9. AI WORKFLOW — 個人情報の項目の洗い出しを手伝わせる

AIは、データ定義書から、作り変えが必要な項目(個人を特定できる項目)の候補を挙げる下書きに役立ちます。

指示例:

「次のデータ定義書の項目一覧から、個人を特定できる可能性のある項目(氏名、住所、連絡先、識別番号、生年月日、口座 など)の候補を挙げ、項目ごとに理由を添えてください。作り変えの方法は提案せず、候補の列挙にとどめてください。」

10. REVIEW — AIの候補を確認する

  • AIが挙げた候補に抜けがないか(名前が一般的でない項目、組み合わせで特定できる項目)
  • 候補のうち、本当に作り変えが必要かを、個人情報の扱いを決める担当と確かめたか
  • データ定義書を AI に渡してよいか(定義書自体に実データが含まれていないか)を事前に確かめたか

11. 人間が判断すること

  • 目的ごとに、本番の作り変えを使うか、生成したデータを使うか
  • 作り変える項目と規則
  • 作り変える前のデータに触れてよい人

セキュリティ例外承認は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。

12. 判断演習

「請求書を発行する機能」のテストに必要なデータを考えてください。

部品のテスト・つなげたテスト・性能のテストのそれぞれで、どんなデータが要るかを書き、そのうち本番のデータを作り変えて使うべきものはどれか、作り変える項目は何かを書いてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

テストの質はデータで決まる。目的ごとに作り方を決め、本番データは形を保って作り変え、複数システムで整合した組を版で管理する。

次に読むもの

本文で参照している成果物:DEV-004 環境・リリース対応表、TST-002 テスト計画・対象一覧

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手