Unit 01-04(STAGE 01 の 4 / 7)

システムの費用は開発費だけではない

学習状況:未着手

このユニットの結論

システムにかかるお金は、作るときの費用だけではありません。

作る前の準備から、移す・教える・使い続ける・更新する、そしていつか止めるまでの費用を、年ごとに並べて考えることが大切です。開発費だけで判断すると、稼働したあとに毎年かかる費用で計画が崩れます。

1. 何の話か

このユニットは、システムの一生にかかる費用の話です。

家を買うときに、買う値段だけでなく、固定資産税・修繕・光熱費・いずれ来る建て替えまで考えるのと同じです。システムも、稼働した日から毎年お金がかかり続けます。

2. なぜ必要か

開発費だけで投資を判断すると、一般的に次のことが起きます。

3. このユニットで分かること

4. システムの一生と費用

  1. 企画・選定
  2. 設計・開発・テスト
  3. 移行・切替
  4. 教育
  5. 運用・保守
  6. 更新
  7. 停止・入れ替え
時期 費用の例(一般的な例) 見落としやすさ
企画・選定 構想づくり、提案依頼、ベンダーの評価にかかる社内外の人の時間 見落としやすい
設計・開発・テスト ベンダーへの支払い、テスト用の環境 見落としにくい
移行・切替 データ移行、移行のリハーサル、切替の当日の体制、旧システムとしばらく並べて動かす費用 見落としやすい
教育 利用者への説明、手順書づくり、問い合わせの窓口 見落としやすい
運用・保守 監視、障害への対応、小さな改修、利用料(毎年かかる) 見落としやすい
更新 ソフトウェアの更新、提供元の支援の期限に合わせた入れ替え、機器の入れ替え 最も見落としやすい
停止・入れ替え 旧システムの停止、データの保管、次の刷新への移行 最も見落としやすい

「更新」の費用は、稼働してから何年もたってから来るため、企画の時点では忘れられがちです。しかし、使っているソフトウェアには、提供元の支援が受けられる期限があります。その期限が来るたびに、更新の作業と費用が発生します。

5. 社内の人の時間も費用

ベンダーへの支払いと同じくらい見落とされるのが、社内の人の時間です。

これらは請求書が来ないため、予算に入らないことがよくあります。しかし、業務の担当がプロジェクトに時間を使えば、その間の通常の業務を誰かが補う必要があります。

6. 年ごとに並べてみる(教材上の例)

次は考え方を学ぶための架空の例です。金額ではなく、比べやすいように相対的な値で示します。

この前提で、稼働後 5 年間を合わせると、100 + 30 + 15 × 5 = 205 になり、開発の費用の 2 倍を超えます。開発費だけを見て判断すると、全体の半分以下しか見ていないことになります。

会計の上で、どの費用をソフトウェアの資産として扱い、どの費用をその年の費用として扱うかは、会社の会計の方針によって決まります。企画の段階で、経理の担当と確かめておきます。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件に関係する記載

  • 大規模基幹システム刷新、約120人規模のプロジェクト
  • 10年分のデータ移行
  • マルチベンダー。Vendor D / タイムリンク — 勤怠・工数管理SaaS
  • M18 本番稼働、M21 初期安定化完了

アステリア案件の費用の総額、内訳、毎年の運用・保守の費用、利用料の金額は、正本に記載がありません。未確定 上の表と計算は教材上の例で、アステリア案件の費用ではありません。

7. THINK — 「稼働後の費用は、そのときに考えます」

(教材上の例)企画の会議で、費用の説明のあとに次の発言がありました。

「稼働後の保守や利用料は、毎年の運用の予算で対応するので、今回の投資の企画には入れなくてよいと思います。」

問題

この考え方で、投資の企画を進めてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

このままでは進められません。

確認すること:

  • 稼働後に毎年かかる費用は、どれだけか
  • その費用を、毎年の運用の予算で本当にまかなえるか。予算を持つ部門は了解しているか
  • 今のシステムの保守の費用がなくなる分と、新しく増える分を比べたか
  • 投資対効果の計算(01-03)に、稼働後の費用が入っているか

どの予算から払うかと、投資の判断に入れるかは別の話です。投資の判断には、稼働後の費用も含めて示します。

8. よくある失敗

9. 成果物との接続

10. AI WORKFLOW — 抜けている費用を探させる

AIは、費用の一覧の抜けを探す下書きに役立ちます。

指示例:

「次の費用の一覧を、企画・選定、開発、移行・切替、教育、運用・保守、更新、停止の時期に分けて並べてください。どの時期にも入っていない費用がありそうな箇所を、確かめるべき問いとして挙げてください。金額は補わないでください。」

11. REVIEW — AIの整理を確認する

  • 費用の分け方が、元の一覧と合っているか
  • AIが、金額や年数を推測で書き足していないか
  • 挙げられた問いを、見積もりを作った人や経理の担当に確かめたか

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — 見積もりの幅と、予備費

企画の時点の見積もりは幅を持つ

企画の段階では、何を作るかが決まっていないため、費用の見積もりは当たりません。世界で共有されている考え方では、見積もりの誤差は工程が進むにつれて狭まる、という形で語られ、「不確実性のコーン」と呼ばれます。企画の時点の見積もりは、1 つの数字ではなく、「下限〜上限」の幅で示します。幅を示さずに 1 つの数字で承認を取ると、その数字が約束になり、あとで幅の分だけ「超過」と呼ばれます。

幅の出どころを書く

幅は、根拠のない上乗せではありません。「要件の数が増えるかもしれない」「移すデータの品質が分からない」「ベンダーの単価が未定」のように、幅の出どころを項目ごとに書きます。出どころが書かれていれば、工程が進んで分かったことから、幅を狭められます。

予備費は別の枠で持つ

分かっている費用の上に、分かっていないことに備える枠を持ちます。これを予備費(コンティンジェンシー)と呼びます。予備費は、各項目の見積もりに薄く混ぜるのではなく、別の枠として示し、使うときには理由と承認を残します。混ぜてしまうと、どこまでが見積もりで、どこからが備えかが分からなくなり、使ったかどうかも追えません。

年ごとの費用にも幅がある

稼働後の運用・保守・利用料にも幅があります。利用料は、利用者の数やデータの量で変わる形が多く、増え方の前提を書いておきます。更新の費用は、提供元の支援の期限から逆算して、どの年に来るかを置きます。

現場で確かめる問い

  • 企画書の費用は、1 つの数字か、幅か。幅なら、出どころが項目ごとに書かれているか
  • 予備費は別の枠として示されているか。使うときの承認の手続きは決まっているか
  • 利用料の増え方の前提(利用者の数、データの量)が書かれているか
  • 工程が進んで分かったことから、幅を狭める見直しをしているか

アステリア案件の費用の見積もりの幅、予備費の有無、利用料の前提は、正本に記録がありません。記録なし

12. 人間が判断すること

  • どこまでの費用を、投資の判断に含めるか
  • 稼働後の費用を、どの予算でまかなうか
  • 費用の会計上の扱い(経理の担当と決める)

13. 判断演習

あなたは、投資の企画書の費用の欄を点検する担当です。

費用の欄には「開発費」と「ベンダーの保守費(初年度のみ)」だけが書かれています。追加で確かめるべき費用を、時期ごとに3つ以上挙げてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

システムの費用は、作る・移す・教える・使い続ける・更新する・止めるまでの一生で考えます。

年ごとに並べ、社内の人の時間も含めることで、開発費だけでは見えない本当の費用が分かります。

次に読むもの

本文で参照している成果物:BUS-002 システム投資企画書、BUS-005 提案依頼書(RFP)、BUS-006 ベンダー評価表

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手