Unit 01-03(STAGE 01 の 3 / 7)

投資対効果をどう考えるか

学習状況:未着手

このユニットの結論

投資対効果は、1つの数字を出して終わりにするものではありません。

何と比べるのか、どの前提で計算したのか、金額にできない効果をどう扱うのかをはっきりさせ、稼働したあとに実際に確かめられる形にしておくことが大切です。

1. 何の話か

このユニットは、投資対効果(かけるお金に対して、どれだけの効果があるか)の考え方の話です。

STAGE 01 の題は「なぜ数十億円を使うのか」です。大きなお金を使う以上、承認する人は「それだけの価値があるのか」を知りたいはずです。その問いに答えるための考え方を見ていきます。

2. なぜ必要か

投資対効果の考え方があいまいだと、一般的に次のことが起きます。

3. このユニットで分かること

4. 投資対効果を考える4つの問い

問い 考えること
何と比べるのか 「投資しない場合(今のまま使い続ける場合)」と比べる。刷新以外の選択肢があれば、それとも比べる
費用はどこまで入れたか 開発費だけでなく、移行・運用・保守・利用料・社内の人の時間まで入れる(01-04)
効果はいつから、どれだけ出るか 稼働した日からすぐに全部の効果が出るとは限らない。慣れるまでの期間を見込む
前提は何か 業務の量、人の数、使い続ける年数など、計算の前提を書き出す

特に大切なのは最初の問いです。「投資しない場合」にも費用や危険があります。今のシステムの保守の費用や、止まったときの損失の危険を比べずに、投資の側の費用だけを見ると、判断を誤ります。

5. 金額にできる効果・できない効果

種類 例(教材上の例) 扱い方
金額にしやすい 手作業の時間が減る、今のシステムの保守の費用がなくなる 計算の式と前提を書く
金額にしにくい 判断が早くなる、数字の信頼性が上がる、保守を続けられない危険がなくなる 無理に金額にせず、何で確かめるか(指標)を書く

金額にしにくい効果を、根拠なく金額にするのは危険です。一方で、「金額にできないから書かない」のも誤りです。金額にできない効果は、どの指標で、いつ確かめるかを書いて扱います。

また、見積もりには幅があります。一つの値だけでなく、「うまくいった場合」「うまくいかなかった場合」のように幅で示すと、承認する人が危険の大きさを判断しやすくなります。

6. 計算の形を見る(教材上の例)

次は、計算の考え方を学ぶための架空の例です。金額ではなく、比べやすいように相対的な値で示します。

この前提なら、毎年 25 の差が出るため、単純に割ると、4 年ほどで費用を回収する計算になります。ただし、効果が出はじめる時期が遅れたり、前提の業務の量が変わったりすれば、この年数は変わります。数字そのものより、前提を書いておくことが大切です。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件に関係する記載

  • 売上高 約5,000億円、従業員 約4,000名
  • 大規模基幹システム刷新、約120人規模のプロジェクト
  • M18 本番稼働、M21 初期安定化完了
  • 投資承認は、AIへ最終委任しない事項の1つ

アステリア案件の投資額、期待する効果とその金額、回収の期間、比較した選択肢は、正本に記載がありません。未確定 STAGE 01 の題名「なぜ数十億円を使うのか」は学習の問いの表現で、承認された投資額の記載ではありません。上の計算の例は教材上の架空の例です。

7. THINK — 効果の金額が大きすぎる

(教材上の例)企画書の下書きに、「業務の効率化により、年間で大きな金額の削減」とあり、その金額で費用がすぐに回収できる計算になっています。根拠の欄には「各部門の見込み」とだけ書かれています。

問題

この計算を、そのまま承認の資料に使ってよいでしょうか。

判断例を開く

判断

このままでは使えません。

確認すること:

  • 削減の金額は、どの作業が、どれだけ減るという前提で計算したのか
  • 減った時間は、本当に費用の削減になるのか(人の数が変わらない場合は、別の仕事に回るだけのこともある)
  • 効果が出はじめる時期を、稼働した日にしていないか
  • 「投資しない場合」と比べているか

前提を書き出し、業務の担当と一緒に確かめてから、承認の資料に使います。

8. よくある失敗

9. 成果物との接続

10. AI WORKFLOW — 計算の前提を洗い出させる

AIは、計算の中に隠れている前提を書き出す下書きに役立ちます。

指示例:

「次の投資対効果の計算について、計算に使われている前提(業務の量、人の数、効果が出はじめる時期、使い続ける年数など)をすべて書き出してください。前提が書かれていないまま使われている値があれば指摘してください。投資すべきかどうかは判断せず、新しい数値も作らないでください。」

11. REVIEW — AIの洗い出しを確認する

  • 挙げられた前提が、元の計算と合っているか
  • AIが、新しい数値や効果の金額を作っていないか
  • 見落とされた前提(慣れるまでの期間など)がないか、人が確かめたか

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — 回収期間と割引、効果の幅

回収期間

投資額を、年間の効果額で割ったものが回収期間です。投資額が 30 億円、年間の効果が 6 億円なら 5 年です。回収期間が長いほど、その間に業務や市場が変わり、前提が崩れやすくなります。経営層が「何年で回収するか」を聞くのは、この前提の危うさを測るためです。

割引して足す

来年の 6 億円と、5 年後の 6 億円は、同じ価値ではありません。将来の金額を、年ごとに一定の率で割り引いて今の価値に直し、投資額と比べる方法があります。世界で共有されている考え方では、割り引いて足した値を正味現在価値(NPV)と呼びます。たとえば年 5% で割り引くと、5 年後の 6 億円は約 4.7 億円として数えます。割引率をいくつにするかは会社の決めごとです。

効果の幅を置く

効果は 1 つの数値ではなく、楽観・標準・悲観の 3 通りで置きます。そのうえで、どの前提が結果を最も動かすか(感度)を見ます。多くの場合、効果の大半は「人件費の削減」として書かれますが、削減した時間が本当に別の価値(売上、品質、残業の減少)に変わるかは、別に確かめる必要があります。

読み手として確かめること

  • 回収期間は何年で、その間に変わりうる前提は何か
  • 割引しているか。していないなら、将来の効果を大きく見ていないか
  • 悲観の場合でも投資が正当化されるか。されないなら、何が条件か

現場で確かめる問い

  • 企画書の回収期間は何年か。その間に変わりうる前提(制度、取引先、人員)が書かれているか
  • 効果は 1 つの数値だけか。楽観・標準・悲観の幅と、どの前提が最も効くかが示されているか
  • 人件費の削減として書かれた効果は、削減した時間が何に変わる前提か
  • 将来の効果を割り引いているか。割引率は会社の決めごとと合っているか

アステリア案件の投資額、効果額、回収期間は、正本に記録がありません。記録なし

12. 人間が判断すること

  • 何と比べて投資を判断するか
  • 金額にできない効果を、どれだけ重く見るか
  • 投資するかどうか(投資承認は、AIへ最終委任しない事項です。正本の方針)

13. 判断演習

あなたは、承認の会議の資料を点検する担当です。

投資対効果の計算の資料について、承認する人の立場で「この数字を信じてよいか」を確かめる質問を3つ考えてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

投資対効果は、比べる相手・前提・金額にできない効果の扱いまでそろえて考えます。

1つの数字より、その数字の前提と、稼働後に確かめる方法のほうが大切です。

次に読むもの

本文で参照している成果物:BUS-002 システム投資企画書、BUS-004 効果測定指標一覧

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手