Unit 04-01(STAGE 04 の 1 / 8)

要望と要件は何が違うのか

学習状況:未着手

このユニットの結論

要望は「こうしてほしい」という声、要件は「システムが何をすべきかとして合意し、確かめられる形にしたもの」です。

要望をそのまま作ると、作る人ごとに解釈が変わります。要望を要件に変える作業が、要件定義の中心です。

1. 何の話か

このユニットは、要件定義の入口の話です。

業務部門からは、たくさんの声が上がります。

これらは大切な要望です。しかし、このままでは、何を作ればよいか、完成したかどうかをどう確かめるかが決まりません。

2. なぜ必要か

要望のまま開発に渡すと、

ということが起きます。

要件にするとは、誰が読んでも同じ意味になり、確かめられる形にすることです。

3. このユニットで分かること

4. 要望を要件に変える

要望 要件
形 「こうしてほしい」という声 「システムは〜する」という決まりごと
主語 困っている人 システム(または業務)
確かめ方 決まっていない テストや確認で確かめられる
状態 出された段階 関係者が合意し、確定した段階

例(教材上の例):

要望の背景にある「なぜ困っているか」を聞くと、本当に必要な要件が見えてきます。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件の要件と業務

  • 約1,500件の要件
  • 業務リーダー:P-005 藤本 遥(経理業務リーダー)、P-006 川村 美咲(プロジェクト管理業務リーダー)、P-007 松本 健太(営業・契約業務リーダー)
  • AIへ最終委任しないことの一つに「要件確定」がある

アステリア案件の個々の要件の内容は、正本に記載がありません。未確定 このユニットの例は、すべて教材上の例です。

5. THINK — 「使いやすくしてほしい」

業務部門から「新しい画面は、今より使いやすくしてほしい」という要望が出ました。

問題

これを、そのまま要件一覧に載せてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

そのままでは要件になりません。

確認すること:

  • 今、どの作業で、何に困っているのか
  • 誰が、どのくらいの頻度で使うのか
  • 「使いやすい」を、どう確かめるのか(入力項目の数、操作の手順、間違いの起きにくさなど)

要望の背景を聞き、確かめられる形に言い換えます。

6. よくある失敗

7. 成果物との接続

危機演習 CR01 要件定義が終わらない では、要件定義が終わらない状況を体験します(学習上の接続です。正式な対応関係ではありません)。

8. AI WORKFLOW — 要望を要件の候補に言い換えさせる

AIは、話し言葉の要望を、要件の形に言い換える下書きに役立ちます。会議記録から要望を抜き出させることもできます。

指示例:

「次の要望を、『システムは〜する』という形の要件候補に言い換えてください。あいまいな言葉(早く、使いやすく、など)には、確認すべき質問を付けてください。数値や対象は推測で決めないでください。」

9. REVIEW — AIの言い換えを確認する

  • 元の要望の意図から、ずれていないか
  • AIが数値や対象を勝手に決めていないか
  • 1つの要望が、複数の要件に分かれるべきではないか
  • 要望を出した人に、言い換えを確認したか

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — 良い要件の性質と、あいまいな言葉の検査

要件が満たすべき性質

要件には、満たすべき性質があります。世界で共有されている要件工学の国際規格(ISO/IEC/IEEE 29148)では、おおむね次のように整理されています。

  • 必要である:この要件がないと、業務または目的が成り立たない
  • 明確である:読む人によって解釈が変わらない
  • 確かめられる:テストや確認で、満たしたかどうかを判定できる
  • 実現できる:技術・費用・期間の範囲で作れる
  • 1 つである:1 件の要件に、複数のことが混ざっていない
  • 追跡できる:出どころ(要望、業務の場面)と、先(設計、テスト)がたどれる

要件一覧の 1 件ごとに、この性質で点検すると、要望のまま混ざっているものが見つかります。

あいまいな言葉を機械的に探す

「速く」「使いやすく」「適切に」「必要に応じて」「など」「可能な限り」。こうした言葉は、要件の中では解釈を読む人に委ねます。一覧をこの言葉で検索し、1 件ずつ、数値か条件か、確かめる方法に置き換えます。置き換えられないなら、まだ要件ではなく要望です。

受け入れ基準を添える

「確かめられる」を具体にする方法として、要件ごとに受け入れ基準を添えます。世界で共有されている書き方の 1 つは、「前提(この状態で)・操作(これをしたら)・結果(こうなる)」の 3 つで書く形です。この形で書けない要件は、何を確かめるかが決まっていません。

測り方の例

  • 要件一覧のうち、あいまいな言葉を含む件数
  • 受け入れ基準が添えられている要件の割合
  • 1 件に複数のことが混ざっている要件の数

現場で確かめる問い

  • 要件一覧を、あいまいな言葉で検索したことがあるか。何件あるか
  • 受け入れ基準が添えられている要件は、全体のどれくらいか
  • 「1 件に 1 つ」になっていない要件を、分けているか
  • 要件の性質の点検を、誰が、どの時点で行っているか

アステリア案件の要件一覧で、あいまいな言葉の点検や受け入れ基準の有無がどうだったかは、正本に記録がありません。記録なし

10. 人間が判断すること

  • どの要望を要件として採用するか
  • 要件の内容を確定するか
  • 複数の部門の要望がぶつかるとき、どちらを優先するか

要件確定は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。

11. 判断演習

次の要望を、要件の候補に言い換えてみてください。あわせて、業務部門に確認する質問を3つ書いてください。

「月末の作業をもっと楽にしたい」

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

要望は出発点、要件は合意して確かめられる約束です。

要望の背景を聞き、誰が読んでも同じ意味になる形に変えることが、要件定義の仕事です。

次に読むもの

本文で参照している成果物:REQ-002 要件一覧、REQ-006 要件確定記録

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手