Unit 00-01(STAGE 00 の 1 / 6)

大規模システム開発とは何か

学習状況:未着手

このユニットの結論

大規模システム開発の難しさは、「作るものが大きい」ことだけではありません。

関わる人・会社・システム・データが多く、期間が長いため、「つなぎ目」と「決めること」が爆発的に増えることにあります。だから、技術と同じくらい、決め方・伝え方・確かめ方が大切になります。

1. 何の話か

このユニットは、この教材全体の入口です。大規模システム開発とは何かを考えます。

会社の中で、数人で小さな業務のアプリを作ることもあれば、数百人が何年もかけて会社の中心の仕組み(基幹システム)を作り直すこともあります。どちらも「システム開発」ですが、後者には、前者にはない難しさがあります。

2. なぜ必要か

小さな開発の感覚のまま大きな開発に臨むと、

ということが起きます。

3. このユニットで分かること

4. 何が「大きい」のか

大きさ 小さな開発(一般的な例) 大規模な開発(一般的な例)
人 数人。全員が顔を合わせて話せる 数十〜数百人。全員が互いを知らない
会社 1社、または社内だけ 複数の会社(ベンダー)が分担する
要件 数十件。担当者が覚えていられる 数百〜数千件。一覧と番号で管理する
システム 1つ 複数のシステムが、データをやりとりしてつながる
データ 新しく作る 古いシステムから長年のデータを移す
期間 数週間〜数か月 1年以上。途中で人も要件も変わる

5. 規模が大きくなると何が難しくなるか

この教材の多くのユニットは、この5つのどれかに対する答え方を学ぶものです。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

この教材で追いかけるプロジェクトの規模

  • アステリア株式会社(架空企業)の大規模基幹システム刷新
  • 約120人規模のプロジェクト
  • 約1,500件の要件、約36本のシステム連携、10年分のデータ移行
  • マルチベンダー(Vendor 4社)、システム 11
  • AI活用あり
  • M-6 構想開始、M0 正式キックオフ、M18 本番稼働、M21 初期安定化完了

この教材は、15の STAGE で、構想から稼働後までを順に学びます。アステリア案件の詳しい紹介は 00-02 アステリア刷新プロジェクトを知る にあります。

6. THINK — 「優秀な人を集めれば大丈夫」

プロジェクトを始めるにあたり、ある役員が次のように言いました。

「優秀なエンジニアを集めれば、大きなシステムでも問題なく作れるはずだ。」

問題

この考えだけで、大規模なプロジェクトを始めてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

優秀な人は大切ですが、それだけでは足りません。

確認すること:

  • 誰が何を決めるか、決まっているか
  • 決めたことを、全員に正しく伝える仕組みがあるか
  • 会社・システムのつなぎ目を、誰が担当するか決まっているか
  • 途中で要件が変わったときの手続きがあるか
  • 全体として正しく動くことを、どう確かめるか

大規模な開発の失敗の多くは、個人の技術ではなく、つなぎ目と決め方で起きます。

7. よくある失敗

8. 成果物との接続

この教材では、70種類のプロジェクト成果物を扱います(成果物一覧)。

9. AI WORKFLOW — AIを「速い作業者」として使う

大規模な開発では、AIは文書の整理、抜けや食い違いの候補探し、下書き作りなどに役立ちます。

指示例:

「次の会議のメモから、①決まったこと、②決まっていないこと、③誰かが確かめると言ったこと、を分けて一覧にしてください。決まっていないことを、決まったことのように書かないでください。」

10. REVIEW — AIの整理を確認する

  • AIの一覧が、元のメモと合っているか
  • 「決まったこと」とされたものが、本当に決まったことか
  • 担当と期限が抜けていないか

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — つなぎ目の数を数える

つなぎ目は数えられる

「つなぎ目が増える」は感覚ではなく、数で見られます。システムとシステムの間でデータを受け渡す連携の本数、会社と会社の分担の境目の数、部門と部門の間で受け渡す業務の数です。アステリア案件では、連携が約36本あることが正本に書かれています。1 本の連携には、送る側・受ける側・データの形・時刻・失敗したときの扱いの取り決めが要るため、連携の本数は、決めることの数の目安になります。

組織の形がシステムの形に映る

世界で共有されている考え方に「コンウェイの法則」があります。システムの構造は、それを作る組織の話し合いの構造に似る、というものです。会社ごとに分担して作れば、会社の境目がそのままシステムの境目になります。一致している箇所は責任がはっきりします。一致していない箇所(1 つのシステムを 2 社で作る、1 社が複数のシステムにまたがる)が、つなぎ目の問題が起きやすい場所です。

直す費用は工程が進むほど増える

あとの工程で見つかった問題ほど直すのに手間がかかる、という経験則は、要件の段階で直せば 1 の手間が、設計・実装・テスト・稼働後と進むにつれて何倍にも増える、という形で語られます。倍率は現場で違うので、「早く見つけるほど安い」という向きを使い、早く見つける仕組み(レビュー、つなぎ目の早い確認)に時間をかける根拠にします。

測り方の例

  • 連携の本数と、取り決めが文書になっている本数
  • 組織の境目とシステムの境目が一致していない箇所の数
  • 問題が見つかった工程ごとの件数

現場で確かめる問い

  • つなぎ目(連携・会社の境目・部門の境目)を数えたことがあるか。数えると何本になるか
  • 1 つのシステムを複数の会社で作っている箇所、1 社が複数のシステムにまたがる箇所はどこか
  • 問題が見つかった工程を記録しているか。あとの工程で見つかる割合が増えていないか
  • 早く見つける仕組みに、どれだけの時間を割いているか

アステリア案件で、組織の境目とシステムの境目がどう対応していたか、問題がどの工程で見つかったかは、正本に記録がありません。記録なし

11. 人間が判断すること

  • プロジェクトの目的と範囲
  • 誰が何を決めるか
  • 決めたことを確定し、全員に伝えるか

この教材では、投資承認・要件確定・設計承認・本番移行承認・Go / No-Go・重大障害判断などを、AIへ最終委任しない事項として扱います(正本の方針)。

12. 判断演習

あなたが、これまでに関わった仕事(システム開発でなくてもかまいません)を1つ思い出してください。

関わる人が10倍になったら、何が一番困ると思いますか。理由とともに書いてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

大規模システム開発の難しさは、つなぎ目・決めること・伝えること・確かめることが増えることにあります。

この教材では、それぞれへの向き合い方を、アステリア案件を通して学びます。

次に読むもの

本文で参照している成果物:PRG-001 プロジェクト憲章、ARC-001 システム全体構成図

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手