Unit 04-05(STAGE 04 の 5 / 8)

要件はどこからどこまで追跡するのか

学習状況:未着手

このユニットの結論

要件は、「どの業務の困りごとから生まれ、どの設計・連携・プログラム・テストで実現され、本番でどう確かめられたか」まで追跡できる必要があります。

要件一覧だけでは足りません。前後のつながりを残すことで、変更や障害が起きたときに、影響する場所を探せるようになります。

1. 何の話か

04-04 要件に番号を付ける理由 では、要件IDは「要件の住所」だと学びました。

このユニットでは、その住所を使って、要件をどこからどこまでたどるかを考えます。

2. なぜ必要か

約1,500件の要件がある大きなプロジェクトでは、次のような質問に答えられないと困ります。

追跡できないと、テストの漏れ、変更の影響の見落とし、障害時の原因の探しにくさにつながります。

3. このユニットで分かること

4. 前にたどる・後ろにたどる

  1. 業務の困りごと・要望
  2. 要件
  3. 設計
  4. 連携(IF)
  5. プログラム
  6. テスト
  7. 本番での確認

両方向にたどれる状態を、一般的に双方向の追跡可能性と呼びます。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件の規模と関連する成果物

  • 約1,500件の要件
  • 約36本のシステム連携(正本で個別に定義されているのは IF-01〜IF-12 の12本)
  • 成果物に REQ-002 要件一覧、REQ-004 要件追跡表、REQ-005 変更要求書、REQ-006 要件確定記録がある

アステリア案件の要件追跡表の実際の列や、どの粒度で追跡したかは、正本に記載がありません。未確定

5. 追跡の表に残すもの(一般的な例)

列 何を書くか
要件ID 要件の住所
出どころ 元の要望、業務、決めた会議
設計 関係する設計書の該当箇所
連携 関係する連携(IF)
テスト 要件を確かめるテストケース
結果 テストの合否と日付
変更履歴 変更要求の番号と内容

列の名前や細かさは、プロジェクトで決めます。大切なのは、空欄を放置しないことです。空欄は「まだつながっていない」ことを示すサインです。

6. THINK — テストの欄が空いている

要件追跡表を見ると、要件の2割で「テスト」の欄が空欄でした。テスト工程は来週終わる予定です。

問題

予定どおりテストを終えてよいでしょうか。

判断例を開く

判断

そのまま終えるのは危険です。

確認すること:

  • 空欄の要件は、本当にテストされていないのか、記入漏れなのか
  • 空欄の要件に、業務上重要なものが含まれていないか
  • 対象外になった要件が、表に残っているだけではないか

空欄の理由を確かめてから、テストを終えてよいかを判断します。

7. よくある失敗

8. 成果物との接続

危機演習 CR01 要件定義が終わらない も、要件の管理を考える題材です(学習上の接続です。正式な対応関係ではありません)。

9. AI WORKFLOW — つながりの抜けを探させる

指示例:

「次の要件追跡表を確認し、①テスト欄が空欄の要件、②設計欄が空欄の要件、③変更履歴があるのにテスト結果の日付が変更より古い要件、を挙げてください。空欄の理由は推測せず、確認が必要な項目として示してください。」

AIは、大量の行から抜けを探す作業を速くできます。

10. REVIEW — AIの結果を確認する

  • AIが挙げた抜けが、本当に抜けなのか(別の表で管理されていないか)
  • AIが関係を推測で埋めていないか
  • 古い版の表を見ていないか

ADVANCED深掘り — 実務者向けに一段深く

深掘り — 双方向の追跡と、カバレッジ率

前向きと後ろ向き

追跡には 2 つの向きがあります。要件から設計・テストへたどる前向きと、テストから要件へ戻る後ろ向きです。前向きで「テストのない要件」が見つかり、後ろ向きで「どの要件にも結びつかないテスト」が見つかります。どちらも、どこかで抜けが起きている印です。

カバレッジ率の読み方

テストに結びついた要件の数を、全要件の数で割ったものをカバレッジ率と呼びます。便利な数字ですが、「結びつきがあるか」しか見ていません。1 つの弱いテストが結びついていれば、その要件は数えられます。率が 100% でも、確かめ方が十分とは限りません。率と合わせて、重要な要件については「どのテストで、何を確かめるか」を個別に見ます。

粒度をそろえる

要件の 1 件とテストの 1 件の大きさがそろっていないと、追跡表は役に立ちません。大きすぎる要件(「請求業務を支援する」)は、追跡されていても確かめられません。要件を確かめられる大きさに分け、番号を振り直すのではなく、枝番で分けます(04-04)。

変わったときに印を付ける

要件が変わったら、結びついている設計・テストに「要確認」の印が自動で付く仕組みにします。人の記憶で追うと、約1,500件の要件の規模では必ず抜けます。

現場で確かめる問い

  • テストに結びつかない要件と、要件に結びつかないテストを、最後に数えたのはいつか
  • カバレッジ率の高い領域で、重要な要件のテストの中身を個別に見たことがあるか
  • 追跡表の 1 行の大きさはそろっているか。確かめられないほど大きい要件はないか
  • 要件が変わったとき、結びついた設計・テストに印が付く仕組みがあるか。人の記憶に頼っていないか

アステリア案件の追跡表の形式、カバレッジ率、更新の仕組みは、正本に記録がありません。記録なし

11. 人間が判断すること

  • どの粒度で追跡するか
  • 空欄の要件を、テスト対象に追加するか、対象外とするか
  • 追跡の抜けがある状態で、次の工程へ進むか

12. 判断演習

本番で障害が起き、ある画面の処理が原因だと分かりました。

要件追跡表を使って、次のことを調べる手順を書いてください。

  • その処理は、どの要件から作られたか
  • その要件は、どのテストで確かめたか
  • 同じ要件から作られた、ほかの処理はどこか

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

要件の追跡は、要件の前と後ろのつながりを残すことです。

空欄は「まだつながっていない」サインです。放置せずに理由を確かめます。

次に読むもの

本文で参照している成果物:REQ-004 要件追跡表、REQ-002 要件一覧、REQ-005 変更要求書

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手