Unit 08-06(STAGE 08 の 6 / 7)

攻撃者の目でどう見るか

学習状況:未着手

このユニットの結論

「安全に作る」と言うだけでは、何から守るのかが決まりません。

守るべきもの(資産)に重さを付け、そこへ近づける入口を列挙し、入口ごとに「誰が、何を狙って、どうやって」を書き出し、対策と残っている危険を並べる。攻撃する側の目で自分のシステムを見直すこの作業が、脅威モデルです。残っている危険がゼロのモデルは、考えていない印です。

1. 何の話か

このユニットは、システムを攻撃する側の視点で弱点を洗い出す方法の話です。

08-01 ログインできれば安全なのか で、認証だけでは安全にならないことを学びました。では、何をすれば「安全」に近づくのか。答えは「何から守るか」を具体的に決めることです。世界で共有されている考え方では、この作業を「脅威モデリング」と呼びます。

2. なぜ必要か

攻撃者の目で見ないと、

ということが起きます。脅威モデルは、設計の段階で弱点を見つける最も安い方法です。

3. このユニットで分かること

4. 5 つを並べる

要素 問い 例(一般的な例)
資産 漏れたら・壊れたら・止まったら困るものは何か。どれだけ困るか 顧客と契約の情報(漏えいで重大)、会計の残高(改ざんで重大)、業務の画面(停止で中)
入口 資産に近づける経路はどこか 利用者の画面、他システムとの連携、外部サービス、運用者の本番操作、開発の道具、AI の実行環境
脅威 入口ごとに、誰が、何を狙って、どうやって 盗んだ認証情報でのなりすまし、連携の経路での改ざん、運用者の権限の乱用
対策 脅威に対して何をしているか。その根拠(どの要件・設計か) 多要素の認証、通信の暗号化、特権の申請制と操作の記録
残り 対策してもなお残る危険。受け入れるか、追加の対策か 本人の端末が乗っ取られた場合は防げない。端末の管理の方針で扱う

5. 見落としを防ぎ、優先順位を付ける

入口の見落としを防ぐには、構成図に「ここから先は信頼しない」という境目を引き、境目をまたぐ経路をすべて列挙します。人(利用者、運用者、開発者、委託先)、システム(連携、外部サービス)、道具(開発環境、AI の実行環境)の 3 つの軸で見ると、抜けが減ります。

脅威の見落としを防ぐには、分類を使います。なりすまし・改ざん・否認(やっていないと言い張る)・漏えい・妨害(止める)・権限の昇格、の 6 つを入口ごとに当てはめます。

優先順位は、資産の重さ × 起こりやすさ で付けます。数値は粗くてよく、比べられれば十分です。上位から対策し、対策の計画と評価の計画(SEC-001 セキュリティ基本方針)に渡します。モデルは SEC-006 脅威モデル に残し、構成が変わるたびに見直します。

CASE FACTFROZEN正本に記載されたアステリア案件の事実

アステリア案件の守るべきものと入口に関する記載

  • データ正本:顧客・契約は営業管理システム、社員・組織は人事マスター、案件・案件予算・案件原価・請求は新基幹、正式な会計残高・仕訳は FIN-CORE
  • システムに SYS-08 認証・ID基盤、SYS-11 監視・ログ基盤、SYS-10 AI開発エージェント がある。外部サービスとして SYS-03 勤怠・工数管理SaaS がある
  • Vendor B クラウドブリッジの担当範囲に IAM が含まれる
  • 成果物に SEC-001 セキュリティ基本方針、SEC-006 脅威モデル がある
  • P-012 石井 稔 — セキュリティ責任者、P-013 木村 亮 — AIガバナンス責任者
  • セキュリティ例外承認は、AIへ最終委任しない事項

アステリア案件でどの資産がどれだけ重いとされ、どんな脅威が想定され、どんな対策が取られたかは、正本に記録がありません。記録なし

6. THINK — 「外部からの攻撃に対策すれば十分」

セキュリティの設計の会議で、次の整理がされました。

「インターネットから入ってくる攻撃に対策すれば十分です。社内の人と委託先は信頼できます。」

問題

この整理で、脅威モデルを作ってよいでしょうか。

判断例を開く

判断

「社内と委託先は信頼できる」は、入口の半分を見ないと宣言しているのと同じです。

確認すること:

  • 運用者が本番で何でもできる権限を持っていないか。操作の記録は残るか
  • 開発者が本番のデータや秘密情報に触れる経路はないか
  • 委託先の作業者の権限は、契約の終了とともに消えるか
  • AI の実行環境が、取り込んだ文書の中の指示に従って変更を加える経路はないか
  • 「信頼できる人」のアカウントが盗まれた場合、外部の攻撃者はその人と同じことができる

信頼は人への評価であって、設計の前提にはできません。設計は「盗まれたら」「間違えたら」を前提に作ります。

7. よくある失敗

8. 成果物との接続

9. AI WORKFLOW — 分類ごとの脅威の候補を挙げさせる

AIは、入口の一覧に 6 つの分類を当てはめ、脅威の候補を網羅的に挙げる下書きに役立ちます。

指示例:

「次の入口の一覧について、入口ごとに、なりすまし・改ざん・否認・漏えい・妨害・権限の昇格 のそれぞれで起こりうる脅威の候補を挙げてください。対策の提案や危険の大きさの評価はせず、攻撃の具体的な手順も書かないでください。」

10. REVIEW — AIの候補を確認する

  • AIが挙げた候補が、この構成で本当に起こりうるか(一般論をそのまま載せていないか)
  • 候補のうち、モデルにないものを意図して外したのか、見落としかを人が区別したか
  • 構成の情報を AI に渡してよいか(守るための文書そのものが機密であること)を事前に確かめたか

11. 人間が判断すること

  • 資産の重さ
  • 残っている危険を受け入れるか、追加で対策するか
  • 対策の優先順位

セキュリティ例外承認は、AIへ最終委任しない事項です(正本の方針)。

12. 判断演習

あなたの職場で使っているシステムを 1 つ選び、「資産」を 3 つ、重さ(1〜5)つきで挙げてください。

次に、人・システム・道具の 3 つの軸で「入口」を 5 つ以上挙げ、そのうち 2 つについて、6 つの分類のどれかに当たる脅威を 1 つずつ書いてください。最後に、対策してもなお残りそうな危険を 1 つ書いてください。

あなたの記録あなたの考え。事実ではありません

判断ノート

既定では保存しないため、ページを離れると消えます。

このユニットで覚えてほしいこと

守るには、攻める側の目で見る。資産に重さを付け、入口を人・システム・道具で列挙し、分類で脅威を洗い、対策と残りを並べる。信頼は設計の前提にしない。

次に読むもの

本文で参照している成果物:SEC-006 脅威モデル、SEC-001 セキュリティ基本方針

関連成果物:未確定(baselineに対応表なし)

関連危機演習:未確定(baselineに対応表なし)

学習状況

状態:未着手